開 戦

最終血戦編・4

雲間から一瞬、陽の光が差し込んだ。
ウムラウトの号令が響き渡り
人類はその歴史上初めての天敵である
パラサイダーに対して
全面戦争を仕掛けたのである。

初めて見る人間の大軍に
パラサイダーは統制が取れずにいる。

「…変だ」

ウムラウトは直ぐにその異変に気が付いた。
ダイヤの姿が其処には無かったのだ。

「指導者が居なければ烏合の衆と云う事か!
 これは勝機!
 皆、この戦…勝てるぞッ!!」
「「おぉーーーーーっ!!!」」

数ではやや推され気味だと予測していた。
余程巧く立ち回らなければ
陽動作戦の手の内も読まれてしまうだろう。
其処迄危惧しながらも挑んだこの決戦。
だが、波は完全に人類側に向いていた。
勢いを増した大軍はそのまま進行を推し進める。

「敵将が現れる迄に成るべく数を減らすんだ!
 閃光弾を使い、同士討ちをさせるんだ!」

轟音と怒号の飛び交う中、
ウムラウトは声を張り上げて指示を飛ばす。
この戦いだけは何としても勝利を収めるのだ。
長年、虐げられてきた人類。
【食料】としてのみ存在を許された
まるで奴隷の様な環境から脱出する為に。
自分達の【世界】を取り戻す為に。

「レジスタンスよ!
 勝利を、信じているぞっ!!」

ウムラウトはそう叫ぶと
敵陣に向かい、腰の刀を引き抜いて斬り込んで行った。

* * * * * *

パラサイダー本拠地。

武装したハートの傍にスペード、クラブが並び立つ。
そしてゆっくりと奥から現れたダイヤ。
その変貌にスペードは苦笑を浮かべる。

「随分と化けたもんだな」
「闘争本能と破壊衝動を強化した結果だ。
 戦場に解き放てば、もはや制御不能」
「それが…ダイヤの望みか、ハート」
「そうだ、クラブ。
 ダイヤは【指揮官】ではなく
 【戦士】の道を選んだ」
「テメェの意思も制御出来ない様じゃ
 【戦士】とは呼べねぇなぁ」
「スペード……」
「四天王で在る事の誇りをも捨て、
 敢えて狂戦士の姿を望んだのだ。
 本人の願いであれば…仕方が有るまい」
「それで奴等に勝てれば苦労はねぇだろうがな」
「…そうだな。
 全ては『勝利してから』判断する事だ。
 この強化が【吉】なのか【凶】なのかは…」

一瞬の空白。
それを打ち消すかの様にけたたましく鳴り響く警報に
四天王は侵入者の存在を確認した。

「…遂に、来たか」
「あぁ、その様だぜ。
 敵陣に堂々と入って来るとは恐れ入った」
「……」
「クラブ?」
「…何でも無い。
 迎撃の準備に入る」
「…了解した」
「しくじるなよ」
「お前もな、スペード」

各人が予め決められた道を進む。
己の全てを賭けた戦場へ。
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