風の砦

最終血戦編・5

屋内だと云うのに風の流れを感じる。
空調?
いや、これは人工的な物ではない。

疾風は警戒を強めつつ、先へと急ぐ。
不意に気配を感じる。
咄嗟に疾風は愛用の銃を構えた。

「此処から先に、進ませる訳にはいかん」
「やはり…現れたか」
「あぁ。お前との決着を着ける為にな」
「クラブ……」

やはり其処に居たのはクラブだった。
ただ、いつもと異なるのは
彼がサングラスを着用していない事だった。

「お前…目が?」
「如何にも。私は生まれつき目が無い。
 事故に因り、両眼は潰れたままだ」
「…その状態で、今迄戦って来たと云うのか?」
「そうだ。肉眼など必要無い。
 生まれた時から【光】を知らぬ私に
 光の下で戦う必要など皆無だからな」
「光を…知らない、だと?」
「あぁ、そうだ」
「…俺にはそうは思わないな」
「何?」
「今のお前を見て、俺はそう思った。
 昔のお前には光など必要無かったのかも知れん。
 だが…」

疾風は銃口をクラブに向ける。

「今のお前は少なくとも【光】の存在を認め、
 それを心の拠り所にしている。
 俺にはハッキリと、そう見える」
「…ほぅ」
「その【光】の正体迄は
 流石にこの俺も判らないままだがな」
「良い勘をしている。流石はセイリュウ」
「…クラブ」
「ならば私から問題を出そう。
 『その【光】の正体は?』とな」

今迄微動だにしなかったクラブが
やはり疾風と同じ様に銃口を相手に向けた。

「答えは、この私を倒せる事が出来れば
 教えてやろう」
「良い提案だ。
 ならば遠慮なく、答えを導き出してやるぜっ!!」

音も無く銃口から淡い緑色の光が伸びる。
済んでの所で疾風の攻撃をかわし、
クラブも愛用の銃で応戦した。
緑と赤の光線銃の攻撃が音も無く繰り広げられる。
撃ってはかわし、又 射撃する。
相手も素早くそれをかわし、又 撃ち返す。

「…光線銃に切り替えていたのか。
 流石に互いの手の内は読み合ってたって訳だな」
「ふふ…。お前とは随分と【相性】が良いらしい」
「その様だな…。だが、クラブ。
 地獄に落ちるのはお前の方だぜ」
「それはどうかな?」
「!!」

今度はクラブが引き金を引いた。
まるで血の様な赤い光が真っ直ぐに疾風を襲う。

「そうは行くかっ!!」

疾風は真っ向から光線を撃ち返す。
両者の間で火の玉が上がり、やがて爆発した。

「くっ!」
「つっ!!」

直後、激しい爆音と爆風が
疾風とクラブ、2人の存在を消し去っていた。
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