「これはプロの仕事だな…」
毛利 亮は現場検証に立ち会いながら
部下に事情を聞いている最中だった。
「…掃除屋の仕業か」
亮はそっと呟いた。
撃たれた被害者は
悪徳で有名な不動産会社社長。
聞けば「自業自得」と返事がきそうだ。
そんな評判の悪い輩が
ある一定の間隔で次々と殺られている。
同じ手口だが
証拠は残さない。
亮は一人、犯人を
【掃除屋】と呼んでいた。
社会を裏から掃除する存在。
商売敵では有るが
何故か憎めないのはどうしてだろう。
「毛利警部補」
「何だ?」
「本部より呼び出しが…」
「やれやれ。
どうせ『戻って来い』だろ?
書類整理より現場の方が
俺は遣り甲斐が有るんだけどな…」
「取り敢えず無線に出て下さいよ」
「解ったよ…」
やれやれと、亮は無線を取った。
「はい、毛利です」
「仕事ぉ~?」
帰って早々、海に告げると
機嫌悪そうな声が返ってきた。
「そ、【裏】のね」
「報酬は?」
「…耳、貸して」
「……安いな。
竜にもっと値段吊り上げるように言え」
「それはアンタの役目でしょ?
竜ちゃんは只の【情報屋】!!」
「面倒な…」
「生活掛かってるんだから」
「解ってるよ」
海はそう言うと
愛用のS&W M586 4inchを調整しだした。
【本気】の時の癖だ。
そして紗羅が最も好きな横顔。
ゾクゾクする程の緊迫感。
「…駄目元で竜ちゃんに話してくるわ」
紗羅は邪魔にならない様にと
そっと扉を閉めた。
地下の射撃練習場で
海は何発か試し撃ちをしていた。
新しい弾丸のチェックである。
「ボブの見立てとは言え
相性が有るからな…」
海の腕は確からしく、
次々と標的の頭部や胸部の的に命中させる。
「まだまだだな…」
そうぼやくと煙草に火を点け、
海は地上へと上がって行った。