Rival è…

一方その頃。

「これはプロの仕事だな…」

毛利 亮は現場検証に立ち会いながら
部下に事情を聞いている最中だった。

「…掃除屋の仕業か」

亮はそっと呟いた。

撃たれた被害者は
悪徳で有名な不動産会社社長。
聞けば「自業自得」と返事がきそうだ。
そんな評判の悪い輩が
ある一定の間隔で次々と殺られている。
同じ手口だが
証拠は残さない。

亮は一人、犯人を
【掃除屋】と呼んでいた。
社会を裏から掃除する存在。

商売敵では有るが
何故か憎めないのはどうしてだろう。

「毛利警部補」
「何だ?」
「本部より呼び出しが…」
「やれやれ。
 どうせ『戻って来い』だろ?
 書類整理より現場の方が
 俺は遣り甲斐が有るんだけどな…」
「取り敢えず無線に出て下さいよ」
「解ったよ…」

やれやれと、亮は無線を取った。

「はい、毛利です」

* * * * * *

「仕事ぉ~?」

帰って早々、海に告げると
機嫌悪そうな声が返ってきた。

「そ、【裏】のね」
「報酬は?」
「…耳、貸して」

「……安いな。
 竜にもっと値段吊り上げるように言え」
「それはアンタの役目でしょ?
 竜ちゃんは只の【情報屋】!!」
「面倒な…」
「生活掛かってるんだから」
「解ってるよ」

海はそう言うと
愛用のS&W M586 4inchを調整しだした。

【本気】の時の癖だ。

そして紗羅が最も好きな横顔。
ゾクゾクする程の緊迫感。

「…駄目元で竜ちゃんに話してくるわ」

紗羅は邪魔にならない様にと
そっと扉を閉めた。

* * * * * *

地下の射撃練習場で
海は何発か試し撃ちをしていた。
新しい弾丸のチェックである。

「ボブの見立てとは言え
 相性が有るからな…」

海の腕は確からしく、
次々と標的の頭部や胸部の的に命中させる。

「まだまだだな…」

そうぼやくと煙草に火を点け、
海は地上へと上がって行った。
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