Soggetto Principale

カラン

夕暮れのOrologioに
ベルの音が響く。

「そろそろ来る頃だと思ってた」
「流石ね、竜ちゃん」
「あ、あずちゃんなら買い物だから」

「じゃあ本題に…」
「値段交渉?」
「そ! 『安い』ってさ」
「海さん、厳しいよ…」
「だけどこっちも命張ってるからさ」
「…解った。何とか交渉してみるよ」
「お願いね」

「でも紗羅ちゃん。
 何時も良いタイミングで来るよね」
「何で?」
「さっきまで毛利さんが居たんだ」
「毛利さん?」
「あぁ。仕事の合間にね」
「毛利さん、この間の件を追ってる」
「あぁ、あの不動産?」
「そう。まぁ海さんだから
 証拠は一切残してないだろうけどね」
「マスター、あぁ見えて職人だから」
「ある種天才だよ」
「本人が聞いたら喜ぶかしら」
「駄目だね。自分でそう思ってるし」
「可愛くない男よね」
「はは…言われてるよ」

竜兵はご機嫌だ。

「そろそろあずちゃん帰って来るわね」
「そうだね」
「じゃあ行くわ」
「海さんには『善処する』って
 伝えておいて」
「解った。
 今度文句ある時は
 本人に言わせるわ」
「げっ! 紗羅ちゃんが来てよ~」
「アハハ。じゃあね」
「又来てね~」

再びベルが鳴り、
風の様に紗羅はその場を去って行った。

* * * * * *

「マスター」

事務所に戻ると
海は何かを読んでいる最中だった。

「洋物のポルノ写真雑誌…」
「あぁ。竜からの差し入れ」
「…で、オカズになったの?」
「生には敵わないな」
「でしょ?」

「で、竜からの返事は?」
「『善処する』って」
「善処ねぇ~。
 期待出来るのか?」

呆れ返り、CABINを口にする。

「一寸公園に付き合えよ」
「公園?」
「あぁ…」
「もう日が暮れるわ」
「だからだよ」
「…そうね」

紗羅の目が妖しく輝く。

「お前の力も必要だからな」
「どうやら厄介な奴みたいね。
 今度の標的は」
「腕が鳴るぜ」

海はそう言って
不敵に笑って見せた。

束になった資料を取り上げ、
紗羅も改めて目を通してみる。

「依頼料…3億。
 これでも『安い』か」
「10億単位の仕事だ」
「そんな物なの?」
「相手が政治関係だからな。
 SPも居る。刑事も動く。
 当然、亮もな」
「成程…」

「警察を封じるのも金次第だ」
「アンタって…」
「悪魔、だろ?」
「うふふ…」

紗羅は怪しく微笑み、
そっと海に口付けした。
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