Affari

どれ位長い時間眠っていたのだろうか。
外はすっかり明るい日が照り出していた。

「7:00AM。もう朝ネ…」
「来るのが遅かったから
 こんなもんか」
「珍しいネ、シッカリ睡眠取って」
「珈琲飲んで来たんだけどな」
「逆効果じゃなかったノ?」
「かも知れない…」

ボブは眠っている海を起こそうとはしなかった。
只 黙って、見守るだけだった。
まるでその姿は母親の如く。

「さて、ビジネスTime。
 その後にでもBreakfast」
「All Right」

流暢な発音で海は応じた。
何故か語学は昔から強い。

* * * * * *

「何、望む?」
「ライフル」
「弾丸は?」
「試しに2、本編で1」
「3つでOK?」
「充分」

「ふぅ~。相変わらずネ」

思わずボブは苦笑を浮かべる。

「カイのその精神、潔い。
 武士道精神は僕、大好きネ」
「THANX」

自信が有るだけじゃこんな条件は出さない。
海のこの態度は
自分を追い詰めて初めて真価が発揮されると云う
【闘う者】の姿勢そのものだ。
ボブはそんな海を気に入っている。

良いパートナーだと思っている。

傭兵生活を経て武器商人となったボブは
そんな客と会える事を楽しみにしていた。
海こそが理想の客だった。
だからこそリクエストには100%答える。
それがプロの仕事だとボブは思っていた。

「商談成立、だな」
「仕事内容は大体判ってル。
 God bless you 海」
「神は神でも、この場合は死神だ…」

ボブお手製の弾丸カタログに目を通しながら
海はお得意の悪態を吐いていた。

* * * * * *

「それにしても…」

サンドイッチを頬張りながら
海はボブに語り掛ける。

「良くこの店潰れないな」
「What?」
「だってそうだろ?
 この御時勢に売春宿だぜ。
 然も性別問わずと来たもんだ」
「年齢には五月蝿いけどネ」
「警察は何やってんのかね~?」

「あぁ、心配無いネ」
「何で?」
「警察の上層部、御得意様」
「…何やってんだよ、国家公務員」
「Careerも多いヨ。官僚も政治家もネ。
 人間、どんな職業でもスケベ兄弟」
「…ヤな兄弟だわ、それ。
 仕事しろよ、税金持ち逃げ」
「海がそう云う台詞言うと
 遂に病気になったのかと
 本気で心配になるヨ」

真剣な表情で見つめられると
とてもじゃないが冗談とは受け取れない。
海は目を真ん丸くしたまま
唖然としてボブを見つめていた。
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