朝の陽射しに眼を奪われる。
朝かと思っていたが、
太陽はかなりの高さに昇っていた。
「昼か…」
鷲汰は大きく欠伸をすると
モソモソとベッドから体を起こす。
「随分と懐かしい夢見たな。
懐かしいけど、嫌な夢だが…」
机に伏せてある写真立てに目をやるが
その側に行こうとはせず
黙って様子を見つめるのみ。
「そろそろ…片付けるか」
寝起きで癖がついた髪を乱暴に
モシャモシャと掻き毟り、
鷲汰は浴室へと向かっていった。
同日の、それよりかなり前。
やはりかなり不機嫌そうに起きる奴が居た。
璃虎である。
「こう夢見が最悪だと…
何か嫌な事が立て続けに起こりそうな
予感しかしてこない」
溜息を吐きながら体を起こすと
台所へ向かい、珈琲を点てる。
手際良く朝食を作りながら
ふと目に付いたのは…書斎棚。
其処には、『封印した』過去が有る。
「何で俺、此処に居るんだろう?」
珈琲を飲みながら溜息しきりの
璃虎なのであった。
午後2時過ぎ。
昼食を求めて彷徨う鷲汰は
何気なく空を見上げていた。
空腹でフラフラしていた
だけかも知れない。
目に入った光景に
思わず息を飲んだ瞬間、
体は階段を駆け上がっていた。
ビルの屋上で躊躇する影。
悟られない様に背後に近付く。
『おいおい、こんな良い天気に
自殺なんて止めてくれよ』
タイミングを見計らい、
鷲汰は素早く身を躍らせる。
一瞬の事にその影は
動く事もままならなかった。
「これからの人生を謳歌する権利、
放棄しちゃうの?
お譲ちゃん」
鷲汰の言葉に、
彼の腕に拘束された影
女子学生は
不満げに彼を睨みつけていた。