Scene・1

File・2

「……」

朝の陽射しに眼を奪われる。

朝かと思っていたが、
太陽はかなりの高さに昇っていた。

「昼か…」
鷲汰は大きく欠伸をすると
モソモソとベッドから体を起こす。

「随分と懐かしい夢見たな。
 懐かしいけど、嫌な夢だが…」

机に伏せてある写真立てに目をやるが
その側に行こうとはせず
黙って様子を見つめるのみ。

「そろそろ…片付けるか」

寝起きで癖がついた髪を乱暴に
モシャモシャと掻き毟り、
鷲汰は浴室へと向かっていった。

* * * * * *

同日の、それよりかなり前。

やはりかなり不機嫌そうに起きる奴が居た。
璃虎である。

「こう夢見が最悪だと…
 何か嫌な事が立て続けに起こりそうな
 予感しかしてこない」

溜息を吐きながら体を起こすと
台所へ向かい、珈琲を点てる。
手際良く朝食を作りながら
ふと目に付いたのは…書斎棚。

其処には、『封印した』過去が有る。

「何で俺、此処に居るんだろう?」

珈琲を飲みながら溜息しきりの
璃虎なのであった。

* * * * * *

午後2時過ぎ。

昼食を求めて彷徨う鷲汰は
何気なく空を見上げていた。
空腹でフラフラしていた
だけかも知れない。

目に入った光景に
思わず息を飲んだ瞬間、
体は階段を駆け上がっていた。

ビルの屋上で躊躇する影。
悟られない様に背後に近付く。

『おいおい、こんな良い天気に
 自殺なんて止めてくれよ』

タイミングを見計らい、
鷲汰は素早く身を躍らせる。
一瞬の事にその影は
動く事もままならなかった。

「これからの人生を謳歌する権利、
 放棄しちゃうの?
 お譲ちゃん」

鷲汰の言葉に、
彼の腕に拘束された影
女子学生は
不満げに彼を睨みつけていた。
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