Scene・3

File・2

腹減りの鷲汰と
手首に怪我を負った少女は
当ても無く炎天下を
フラフラと歩いていた。

「あれ、鷲汰さん?」

そんな彼に気付き、
声を掛けて来たのは
拓馬である。

「どうしたんですか?
 怪我してるの?」

璃虎とはまるで反対の反応。
まぁ、これが普通かも知れない。

「一寸頼まれてくれる?」
「勿論ですよ。
 じゃあ俺の家に向かいましょう」

拓馬はそう言うと
少女の様子を伺いながら
早足で自宅へと向かった。

* * * * * *

「疲れちゃったみたいですね」

静かに寝息を立てる少女に
拓馬は優しい笑みを浮かべている。

「…済まんな、拓馬」
「言いっこ無しですよ」

普段の鷲汰らしからぬ元気の無さ。
拓馬は先程からそれが気になっていた。

「何か…遭ったんですか?」
「ん?」
「だって鷲汰さん…
 落ち込んでるみたいだし」
「そう?」
「失恋でもしました?」
「…まぁ、ね」

涼しい顔を浮かべているつもりだろうが
多少の動揺は拓馬にも見破られている。
それも少しショックだった。

「それはそうと、この子…」

不意に視線を少女に戻し、
拓馬は話を変えた。

「どうしたんですか?
 随分な所に怪我して…」
「…リストカット」
「…何で又」
「さぁな。思春期は色々有るんだよ」
「それで保護したと…」
「まぁ、ね」

進んで人助けするタイプでは無いと
普段から鷲汰は豪語しているが、
拓馬はそんな彼の台詞こそ
天邪鬼の表れだと思っている。

「さて、どうしましょうかね」
「そうだな…。
 未津流さん巻き込もうか」
「未津流さんは弁護士ですよ。
 専門外かも知れないですよ」
「…そだね」

鷲汰は再び頭を抱え込んでしまった。
Home Index ←Back Next→