タラークはご機嫌だが、
どうもキリークは街に慣れない様子で
先程から落ち着かない。
盛んにアークの顔を見つめている。
「大丈夫だって」
とは言いながらも、
アーク自身も自信が無い。
キリークの刺青はかなり目立つのである。
「泥でも塗って誤魔化すか?」
「無駄だ」
ウーンは一言で切り捨てた。
「俺達も『お尋ね者』だと云う事を忘れるな」
「ほ~い」
「アイツは絶対覚えちゃいねぇな…」
アークの呟きを耳にしながら
ウーンは静かにキリークを見つめる。
「お前も、人間に慣れる努力をしろ。
人間であればこそだ」
「慣れ…る……」
「そうだ」
「……」
救いを求める瞳。
真っ直ぐにアークを見つめてくる。
「…お前は一人じゃないから、キリーク」
「そう云う事」
アーク、タラーク、
そして無言ではあるもののウーンの力強い表情。
キリークは漸く、小さくだが頷いた。
「町だ…」
アークは目を細めて先方を見つめた。
だが、その先にあるものは
どう見ても『廃墟』であり、
人の気配は感じられない。
「何が遭ったんだろう?」
「さぁ…」
おどけてみながらも、タラークは既に
腰に忍ばせた大型リボルバーを手にしている。
「来るぞ!」
ウーンの声が一際響く。
まるでそれがゴングの様に。
地面から一斉に伸びてくるコードの様な触手。
真っ直ぐに4人に迫る剥き出しの部分。
確かに、其処には機械の様な部品が見えた。
生物系の触手では無い。
「ピクシー!!」
「はいよ~~~ん!」
アークの呼び掛けに、彼女は軽やかに答えると
いつの間にか彼の前に姿を現した。
シンクロ率が高く、レベル差がマスター側に利が有ると
召喚は格段に速く確実になる。
アークがピクシーと契約しているのは
そう云う利点を突いているのだ。
尤も、彼女自身も経験を積み
他のピクシーよりは遥かに魔力も上昇している。
アークの仲魔として、アシスト係としては充分な程。
「機械の触手って…気持ち悪~~~いっ!!
喰らえ、『オン・イー』ッ!!」
何とも気の抜ける声とは裏腹に
激しい稲妻が触手を狙い撃ちする。
しかし、表面のコーティングが邪魔をするのか
ダメージは思った程与えられていない。
「何、コイツ等っ?!
むっかつく~~~っ!!」
「ピクシー」
「何、キリーク?」
「俺が表面を『焼く』から
その後に『イー』を撃ってくれ」
直接攻撃組は触手の奇妙な動きに悪戦苦闘し、
タラークも照準を合わせ難いのか
アイテムを使って回復係に徹している。
突破口を開くには魔法しかない。
「間髪入れずに撃ち込んでやるわ!」
ピクシーの元気有る返事に
キリークは笑みを浮かべた。
「アーク、ウーン、離れろっ!」
彼の声に、作戦を察したのか
2人は素早く触手との距離を開ける。
「…『オン・ラー』」
キリークの声に反応し、
彼の両手に炎の『因子』が召喚される。
それをゆっくりと合わせ…撃つ。
炎の大波が触手を飲み込んだ直後、
ピクシーの『イー』が
援護射撃の様に敵を襲った。
完全に動きがおかしくなった触手を倒すのは
アークとウーンの役目だ。
2人は見事な剣戯で触手を寸断していった。