Act.5:The Hermit

Urthr 編

意外な奴と再会した。
ローブを深くまで被っている謎の男。
俺をこの奇妙な旅に誘った男。

「久しぶりだな」
悪びれも無く、極 自然に
男はそう言ってローブの奥から笑みを見せる。

「最初に出会ってからもう何年過ぎた?
 随分と精悍な顔つきになった」
「さぁね、忘れたよ」
「女神の御機嫌は如何だい?」
「…女神本人に聞けば?」

俺にこの『ショットマグナム』を渡したのは
他でもない、この男だ。
人間に魔法を使用させる事が可能で
女神を召喚し、使役させる事の出来る
この『ショットマグナム』を
奴は無償で俺に渡した。

「アンタが自分の人生を
 面白可笑しく、楽しく過ごせれば良い。
 それが俺に対する報酬だよ」

男は愉快そうにそれだけを告げると
風の様に消えた。
あれから、既に5年以上は経過している。

目の前の男はあの頃とまるで変わらない。
ヨレヨレの深緑色のローブ。
白さの目立つ無精髭。
怪しげな雰囲気。

「アンタ、何者なんだ?
 あの頃も、今も…
 この戦いの旅がアンタに何をもたらす?」
「私は傍観者だよ。
 只の、見物客」

最初の出会いの際もそう言ってたな。
思い出したよ、今の台詞で。

「仲間不在の時に俺に会いに来るとはね。
 どう云う心理なのか知りたいよ」
「ふふふ…」
「まさか、逢引なんて洒落た事
 抜かす気じゃないだろうな?」
「群れるのが嫌いだと言っていた頃が
 懐かしく感じないかね?」
「……」

「仲間、か。
 良い傾向だ。
 それでこそ銃を渡した価値が有る」
「…アンタ、一体……?」

「又 会うかも知れないね。
 その時は『仲間』にも
 宜しく伝えないといけないかな?」

男はやはり俺の前から
霧散する様に姿を消した。
魔の気配はしないが、人間業じゃねぇな。

* * * * * *

ローブの男との一件は
誰にも話す気には…なれなかった。
まだ、時期も早い。
俺の直感が、そう囁く。

「…どうした?」
俺の異変には直ぐに気付く奴が居る。

焚き火を目の前にし、
ウーンは静かに口を開いた。

「今日のお前は…
 随分と静かだな」
「偶には良いだろう?」
「そうだな」

随分とあっさりした返事だが
正直、今はその方が助かる。
付き合いの長さは確実に
俺達の相互理解を高めていた。

「仲間…か」
「……」
「独り言、さ」
「…そうか」

ウーンは焚き火に枯れ木を入れ、
炎の勢いを強くしている。

今晩は冷える。
眠っているアークやキリークに対する
彼なりの心使い、配慮。

「なぁ、ウーン?」
「何だ?」
「明日は…晴れるかな?」
「…さぁな」

素っ気無いながらも
ウーンの口元には笑みが浮かんでいた。

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