Act.9:Memories・2

Urthr 編

「凄い刺青だな。彫ったのか?」
「生まれつきだよ」
「へぇ…。それにしても格好良いな」
「本当?」
「あぁ、格好良いよ」
「そんな事言われたの、初めてだ」

青年は無邪気な笑みを浮かべている。
本当に嬉しかったのだろう。

「お前、何て名前なんだ?
 俺はアーク」
「名前? キリーク」
「キリークって言うのか」

初対面の筈なのに話が弾む。
彼とはきっと、良い仲間に成れる。
アークは、そしてキリークもそう思っていた。

「アーク!」
「あ、隊長。実は…」
「貴様、魔王を目の前にして
 何をしておるのだっ?!」
「…えっ?」

アークの上司に当たる隊長は
瞬時にDAMを操作し、攻撃に転じてきた。

「ちょ…待って下さい!
 コイツは……っ!!」
「アーク、危ない!」

隊長は躊躇無く召喚悪魔に魔法を行使させた。
それだけで、アークにとっては
『信じられない』出来事だった。
そして、呆然として動けない彼を守ったのは
他ならぬキリークだったのである。

「ラーッ!!」

召喚悪魔の放った火炎系の魔法を
自身の魔法で相殺したのだ。

「キリーク…お前……」
「逃げて、アーク!
 狙いは俺だから」
「でも……」
「俺、アークを巻き込みたくない。
 大切な友達だから」
「キリーク……」

その後どうなったのか、
アークは殆ど覚えていない。

* * * * * *

気が付いた時は自室のベッドの上だった。
体のあちこちが痛むので
恐らくは爆風にでも煽られたか。

「……」

DAMを操作し、自身の仲魔である
妖精族のピクシーを召喚した。

「元気無いわね、アーク。
 まぁ…無理も無いか」
「なぁ、ピクシー」
「なぁに?」
「俺が気を失ってる間、何か遭ったか?
 キリークは…助かったのか?」
「アーク……」

ピクシーは非常に言い難そうにしている。
その態度で彼は察知した。

「倒されたのか…?
 もしかして、もう……」
「生きてるわよ、一応。
 だけど、アークを庇って魔法を直撃したから」
「…何だってっ?!」
「地下牢に捕らえられてるって…」
「どうして、アイツが……」
「解らない。けど……」

ピクシーはジッとアークを見つめる。
何かの決断を待っているかの様に。

「ピクシー」
「なぁに?」
「俺は…キリークを助ける」

アークは素早くベッドから起きると
慣れた動作で鎧を着け始めた。

「キリークは俺を
 『大切な友達』だと言ってくれた。
 俺の為に体を投げ出して助けてくれた」

アークの心の中に芽生える
キリークへの思い。
そして…。

「隊長は…俺に魔法を放った。
 俺を倒しても良いって思ってた。
 俺は…使い捨ての道具程度だったんだ」
「アーク……」

「俺はキリークを助ける。
 今度は…俺の番だ」
「その言葉、待ってたよ。
 それでこそアタシのマスターだ!」
「力を貸してくれよ、相棒!」
「任せて頂戴よ!!」

アークとピクシーは互いに強く頷き、
キリークが捕らえられている地下牢に向かった。
Home Index ←Back Next→