「何?」
「ロッソって目が悪いの?」
「何で?」
「いや、いつも眼鏡をかけてるから…」
「あれ、伊達眼鏡よ」
「そうなの? 何で?」
「何でって…御洒落じゃないの?
私も理由は聞いた事無いから知らない」
「あ…そうなんだ。それと……」
「まだあるの? 阿佐も物好きね」
「いや、ロッソじゃなくって…」
「誰? ゲール?」
「そうじゃなくて……」
そう語る俺達の横をヒョロっとした
顔の白い細身の男が無言で通り過ぎた。
「…あの人」
「【
「何やってる人?」
「部屋に引き籠って
「……」
ベルデの回答には『それ以上聞くな』と云う
無言の圧力が感じられた。
恐らくは一番年下と思われる彼女でさえ
時々発するこの威圧感。
『俺も一応現職の警察官なのに…』
立場が無い、そう思った。
「賑やかやなぁ…」
買い物から帰り、自室でPCを弄りながら
呆れ顔でシーニーは一人呟いた。
「名前、何やったっけ?」
「阿佐」
「阿佐…。あぁ、有った。
モニターには制服姿の阿佐の写真が。
シーニーはいとも簡単に
彼の所属である警視庁のデータベースにアクセスしたのだ。
「へぇ~、
あの【水間 次郎】の直属の部下かいな。
これ又 厄介やなぁ~」
「まぁなぁ~。
そうは言っても水間程の厭らしさは感じないが」
「水間みたいな人間がゴロゴロ居ったら困るわ」
キーボードを数か所叩き、アクセスを遮断すると
シーニーはロッソやゲールに向き直った。
「誰が偵察に来ようが俺等は変わらん」
「そう言う事だ」
「ゲールも、そう思うか?」
ゲールは笑みを浮かべたまま数度頷く。
気持ちは同じだと伝えているのだ。
「シーニー」
「ん? 何や」
「依頼が来てる」
「ほぅ…」
ロッソに促され、再度モニターをチェックする。
【Revenge bulletin board】と銘打たれた画面に羅列する文字の数々。
吟味するかの様にシーニーは顎に手を当てて唸る。
「この依頼人の名前、確か…」
「あぁ、そうやな。
【あの事件】の遺族か」
「確か証拠不十分で容疑者が釈放されてたよな」
ロッソの瞳の奥が怪しく輝く。
「ベルデには後で話しておくか」
「
「…五月蠅ぇよ、シーニー」
「じゃ、作戦立てる為に情報洗い直すとしまっか。
【
満足気に笑みを浮かべ、
シーニーは情報の波に飛び込んでいく。
そんな彼の姿を
仲間達も又、笑みを浮かべて見守っていた。