事件ファイル No.1-3

幼児連続虐待殺人事件

「シーニー」

ロッソはそのまま地下室へ向かい、
手に入れた資料をシーニーへと手渡した。
暫く無言で資料に目を通すと同時に
シーニーの指が慌ただしくキーボードを叩き出す。

「やっぱりな。食人カニバリズムの習慣有りか」
「シーニーが睨んでた通り、
 体液反応が欠損部分から出たそうだ」
「脇腹やろ? 特に子供は柔らかくて噛み易い」
「…お前、食った事有るんじゃねぇの?」

ロッソの毒舌にシーニーはニヤリと笑って返すだけ。
見終わった資料を机の引き出しにしまうと
彼は被害児童の遺体写真をディスプレイに掲示した。

「実はな。被害者は奴の子供達だけじゃないんや」
「まだ居るのか?」
「この近辺、数年に渡って
 子供の神隠し事件が発生してる。
 犯人の足取りも掴めないままで
 警察も半ば諦めとる案件や」

次にディスプレイは子供の消息が途絶えた地点を
表す地図を掲示した。

「忠広の生活圏だな」
「そうや。この情報やと限りなく奴はクロに近い」
「クロ…」
「現状はグレーって所か。
 何せ裁判を逃げ切った男やからなぁ」
「…証拠を揃えても精神疾患で逃げられるってか」
「そう云う事やな。それと此奴コイツ、バックが在るで」
「バック?」
「ほれ」

シーニーが次に出した情報を目にして
ロッソの目が急に険しくなった。

「奴等が……」
「ほんまに。犯罪の臭いがすると必ず背後にる」
「…忠広の、奴の階級グレードは?」
階級グレード? 道具程度の奴にそんなモン要らんやろ」
「成程。使い捨ての駒って訳かい」
「実に奴等らしいわ」
「シーニー。忠広の次女の行方は?」
「一応追ってはいるが、サッパリやな。
 生きてるのか死んでるのかすら感知出来ん」
「俺の【目】か、ベルデの【耳】は使えるか?」
「…あぁ。そっちの方が確実やな」

シーニーはロッソに向き合うとニヤッと笑みを零した。
自信が有る時に見せる表情だ。

「もし地下室…が在るとしたら、
 お前等の【目】と【耳】は確かに役に立つ。
 近場を探ってもらおか。
 先ずはその子がまだ生きてるかどうか、やな」
「…先に聞いておく。
 手遅れだった場合は?」
「掲示板へ投稿した老夫婦の気持ちに応えるだけや」
「…相変わらず、投稿者の正体はお見通しだな」
「この俺が管理人なんやぞ。
 俺に個人情報提供してるだけやってのに」
「だからこそ、依頼内容の真偽が見抜けるってか」
「まぁ、それだけやないけどな」

シーニーはそう言うと、目を閉じた。

「『聞こえてる』やろ、ベルデ?
 そう言う事やから、ロッソと役割分担して」
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