ベルデの呼び掛けに、脅えた様な視線を返す。
呼ばれた水間は、まるで幼子の様だった。
「貴方が本当は何処の所属で、何を隠しているのか。
私は、何となくだけど判ってる」
「……」
「ロッソやシーニーの事件は、避け様が無かった。
だけど、ゲールの…高須賀さんの件だけは違う」
「あの男は、治療カプセルから君を持ち出そうとした」
「だから…殺す事にしたの? 口封じで?」
「…そうだ」
「直接手を下したのは…貴方なの?」
ベルデの表情が険しくなる。
水間が言い淀み、両目を伏せた直後。
「其処迄だ」
「ロッソ!」
「?!」
追跡して来たロッソがベルデに合流した。
少し強引に彼女の体を抱き締めると
ロッソはその鋭い視線を水間へと向けた。
「妙子から聞いてな。後を追い駆けた」
「心配して来てくれたのね。
ありがとう、ロッソ……」
「……」
「【声】で彼女を呼び出したのか」
「【H-S-K】、貴様に用は無い」
H-S-Kと呼ばれ、ロッソはその眼を大きく見開いた。
「遂に本性を表しやがったか。
【GvDの
「黙れ、【危険分子】。
貴様だけは早めに処分をしておくべきだった」
「出来るもんならやってみな」
ベルデを抱き締める腕に力を籠め
ロッソは殺気を放っている。
「GvDを敵に回したまま生きていけると思うな。
貴様等の行動は全て、GvDが管理している」
「だからどうした?
既に死ぬ権利さえ失った
俺達に対する最後通告のつもりか?」
事と次第によっては此処で戦う事も辞さない。
ロッソには其処迄の覚悟があった。
ベルデが止めなければ、実際に戦っているだろう。
「何故 其処迄出来る?」
「はっ?」
「一人の女の為に、
何故 其処迄、己の全てを投げ出せる?
その娘が、自分の気持ちに応える事等
無いかも知れないと言うのに」
「お前は、相手が自分に100%答えてくれなきゃ
一歩も動けないって言うのかよ。
へっ、臆病者の言う台詞だな」
莫迦にした様な表情を浮かべ
ロッソは短くこう言い切った。
「『志穂だから』だよ」
「彼女がG-Cell保持者だから、と云う意味か?」
「莫迦じゃねぇの?
そんなのどうでも良い。
俺にとって必要なのは的場 志穂であり、ベルデだ。
俺が心底 惚れた女が此処に居る。
それが俺の戦う意味、存在意義の全てだ」
「……理解出来ん」
「されたくもねぇ」
「ロッソ…」
「帰りに何処か寄ろうか?
皆に土産でも買って帰ろうぜ」
「…そうね」
「待て! まだ話は終わっていない!!」
「お前とは話にならねぇ」
振り返る事無く、ロッソは言い切った。