事件ファイル No.10-8

ビル清掃員転落死亡事故 及び 甲斐 幸秀 失踪事件

「俺が彼奴アイツに初めて会ったのは…
 公安に配属されて暫くしてからやった」

シーニーは静かにそう語り出した。

「当時は既に【瀬戸】と名乗っていた。
 彼奴アイツは俺の相棒バディとして
 どんな現場でも引っ付いて来た。
 正直、鬱陶しいと思っとったが
 どんなに過酷な現場でも…
 食らい付く様に俺から離れんかった」
「「……」」
「今思えば…そんだけ自信が無かったんやろう。
 一人で居る事に対し、異様に怯えとった」
「お前がGvDの存在に気付いたのは…
 何時いつ頃なんだ?」
「公安に入って直ぐ位かなぁ…?
 先輩がヤケに落ち着かん時があって
 俺はコッソリと資料を漁ったりしてたんや」
「「……」」
「驚いたわ。
 表向きに出来ない事件の多さにな。
 確かに、公安の範疇外の事件も有ったが
 その一つ一つに『触れたらアカン』闇を感じた」
「成程な…」
「GvDと云うよりも、
 俺が最初に奴等の動きを察知したのは
 志穂に関してやな」
「え? 私?」
「あぁ。可笑しいと思った。
 書類上は『極普通の少女』に対して
 ありとあらゆる情報を集めとった。
 志穂が産まれた時からずっと
 その成長や言動を逐一調べとったんや」
「何、それ? 気味が悪い…」
「俺も当然そう思った。気持ち悪って。
 だから逆に会うてみたくなった」
「志穂にか」
「そうや。怪しまれん様に慎重に
 志穂や彼女の家族と接見する機会を模索しとった」

勿論それ等は本来の仕事とは異なる。
甲斐本人の興味から起こした行動だ。
そして、志穂の事を探る行動は
彼の立場上『最も禁忌』であったのだ。

「その禁忌タブーを生み出したのは…」
「GvDって訳やな」
「志穂の情報を外部に流出させる訳にはいかなかった」
「そう云う事や。だからこその口封じ」
「其処迄して守りたかった私の秘密って……」
「……」
「……」

ベルデの疑問に対し、シーニーもゲールも無言のまま。

「G-Cell保持者」
「鷹矢っ!!」
「甲斐、お前も言っただろうが。
 パンドラの箱を開ける時が来たんだ」
「しかしやなぁ……」
「ロッソ…。ベルデ……」
「…G-Cell。神の遺伝子……」
「そうだ。お前はそれを持っている。
 お陰で、俺達も復活する事が出来た」
「……」
「只『それだけ』の存在だ。
 全ての死者を蘇らせる事は出来ない。
 それ以外に特別な能力がある訳じゃない」
「ロッソ……」
「奴等が手にしたとしても
 所詮は宝の持ち腐れだよ。
 G-Cellが、じゃない。
 志穂。お前が、だ」
「晋司……」
「鷹矢。お前…何か知っとるな?」

シーニーが途端に表情を険しくした。
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