事件ファイル No.11-2

的場一家虐殺事件・後編

G-Cell神の遺伝子とは何なのか?
自分なりに何度も考察し、纏めてみた。
しかしどれだけ思考を凝らしても
行き付く先は必ず或る一点。

「女神様の瞳…」

チョーカーで隠された瞳の位置をそっと撫で
ベルデは唇を噛み締める。

「もし…。
 もしも私が恐れている通りなら…
 大変な事が起こってしまう……」

彼女が想定する未来。
人が【人】を超えようとする暴挙。
その研究がこの場所で行われている事実。

「ベルデ」
「? シーニー?」
「あぁ、一寸良ぇかな?」
「…どうぞ」

同部屋のロッソは
まだトレーニングから帰って来ない。
ゆっくり扉を開くと
其処にはシーニーの他にゲール、
そしてトレーニングに向かった筈の
ロッソの姿も在った。

「あれ? 勢揃い?」
「あぁ。俺が召集を掛けたんや」

シーニーは笑っていたが、その口元は硬い。
背後に居るロッソやゲールの表情も同様だ。

「部屋、入って」
「じゃ、お邪魔しますわ~」
「…只今」
「ロッソだけは『お帰りなさい』だね」
「だな」

なるべく普段通りに。
何処で監視されているか判らない身の上。
こんな状況でも
いや、こんな状況だからこそ
尚更 油断は出来ない。

施錠を入念に確認すると
シーニーは何かの小型機械を取り出した。

「何、それ?」
「妨害電波発生器」
「?」
「盗聴器や盗撮カメラが
 各部屋に設置されているのは
 既に判ってる事やからな。
 態々話の内容を教えてやる程
 俺はお人好しやあらへん」
「…バレないかな?」
「シーニーがそんなヘマするとは思えん。
 大丈夫だよ、ベルデ」
「ロッソ……」
「ま、ロッソからお墨付きも貰うたし
 その辺は安心してくれて良ぇよ、ベルデ」
「…ん。解った」
「じゃ、作戦会議始めよか」

シーニーの合図に、ゲールが静かに頷くと
彼も懐から小型PCを取り出した。

* * * * * *

様々な情報を精査しながら
四人は互いの意見をぶつけ合っていた。
もうどの位時間が経過しただろうか。

「此処でハッキリしとるのは…
 奴等が『或る細胞』を利用して
 新しい生命体を生み出したって事」
「それがこの【核子】って奴か…」
= 気味が悪いね =
「本当。気持ち悪い…」
「シーニー。此奴コイツの弱点は?」
「無い」
「はぁ~っ?!」
「現存する兵器類では太刀打ち出来ん。
 自己再生能力が高過ぎる」
「そんなのがウジャウジャ出来てるんだろ?」
「そりゃ~もう!
 増殖能力もかなり高い数字弾き出しとるし」
= 外の世界に出たら、そんなのを相手にするんだろ?
 NUMBERINGや人形ひとがたどころじゃなくなるよ? =
「……」
「どうした、ベルデ?」

何かに気が付いたのか。
ベルデは真っ直ぐな瞳でロッソを見つめた。
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