事件ファイル No.11-4

的場一家虐殺事件・後編

作戦決行迄 後26時間。

ベルデは眠れぬ夜を過ごしていた。
どうしても落ち着かない。
すると。

「眠れないのか?」
「ロッソ…」
「俺も、体力余ってるのか
 なかなか眠気が来なくて困ってる」

全く困っている様な素振りを見せずに
ロッソが笑いながら近付いて来た。

「ロッソも眠れない?」
「別に今、どうしても
 寝なきゃいけない訳でもねぇもんな」
「それはそうだけど…」
「それよりもさ」
「?」
「SEXするか?
 その方が安心して寝れるかも」

考えもしていなかった申し出に
ベルデは暫し呆気に取られていた。
しかしそれが冗談ではないと気付くと
彼女は静かに頷き、ロッソの胸に体を預けた。

「その方が…安心出来る」
「だろ? …俺もだ」
「ロッソも?」
「当たり前だって」

ロッソはそう言うと、
ベルデの唇に軽くキスを送った。

「さぁ~ってと。
 お邪魔虫には退場願おう」

彼は懐から何かを取り出すと
それを天井の一角に向けた。

ピシッ

部屋に響く何かを破壊した音。
それが部屋に取り付けられていた
盗撮カメラだった。
こう云う時の為に、とシーニーから手渡された
小型拳銃で破壊したのだ。

「今迄散々我慢してたんだ。
 最後位、好きにさせろ」
「…うん。
 ずっと見られてるの、嫌だった」
「見られながらするもんじゃねぇからな。
 【恋人同士】が愛し合う行為ってのは」
「……ロッソ?」

恋人、とハッキリ ロッソが口にしたのは
これが初めての事である。
【Memento Mori】の四人の間で
最も仲が良かったとはいえ
二人の関係は恋人よりも兄妹に近いと
ベルデは一人思っていたのだ。

だからこそ嬉しかった。
彼の本心が、漸く解った瞬間だった。

「愛してるよ、ベルデ」
「ロッソ…。愛してる。
 ずっと、ずっと傍に居てね…」
「もう二度と離さない。
 だから安心して良いぞ」
「うん…。約束だよ、ロッソ」
「あぁ。勿論だ…」

部屋の外ではアラームが鳴り響いている。
だが、二人はそんな事も御構い無しに
二人だけの世界へと昇り詰めていた。

* * * * * *

「予定よりは少し早めやけど」

シーニーはそう言って、悪戯っぽく笑った。

「ちとフライング噛ましたろか」
= 良いね。お祭りみたいで =
「やろ? 先ずは…」

シーニーとゲールは自室ではなく
第二PCルームに待機している。
シーニーは其処で稼働している
メインPCにアクセスし、
プログラムの書き換えを始めた。
研究所内のあちこちで様々なアラームが鳴り響く。
研究員達の悲鳴が聞こえてくる。
制御しようとしても
シーニーの操作は何倍も先手を打っており
とても太刀打ち出来ないらしい。

「これで少し位は
 ベルデとロッソも楽しむ時間出来たんちゃう?」
= その為のプログラムの書き換え?
 シーニーって本当に優しいよね =
「そんなんちゃうで」

はにかむシーニーに対し
ゲールは嬉しそうに微笑んでいた。
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