事件ファイル No.11-5

的場一家虐殺事件・後編

的場 志穂は家族と共に惨殺されてから
その身柄をGvDの管理下に置かれていた。
G-Cellをその身に宿していると
組織のSPCスーパーコンピュータが演算で弾き出した存在。
彼女の秘められた可能性を引き出す為に
GvDはT支部に置かれた研究所で
彼女に纏わる人体実験を繰り返していた。

彼女の血や細胞片を使用しての
死者再生実験。
SPCの計算上では
あらゆる生命体に対応出来る筈だったが
何故か復活を果たした死者は
『一人も居なかった』。

それでもGvDは粘り強く研究を続けた。
この再生実験が成功すれば
今使用しているNUMBERINGの比ではない。

的場一家虐殺事件は最初こそ世間を騒がせたが
1年過ぎ、2年も過ぎると大衆の関心も薄れ
他のニュースに紛れていった。
GvDの目的は誰にも知られる事無く
研究に没頭出来る…予定だった。

鷹矢 晋司。そして甲斐 幸秀。
この両名の執念・執着心さえなければ。
直ぐにでも処分したいところだったが
今、下手な手を打つと
志穂の存在が表沙汰になる。
彼女の存在だけは
何が何でも隠さなければならない。
何としても。

* * * * * *

燃え盛る研究所内で
マシンガンの連射発砲音が鳴り響く。
扉の解錠装置が全て破壊されており
研究員達は研究所内に閉じ込められたまま
何処にも逃げる事が出来ずにいた。
目の前で一人、又一人とほふられる。
自分達の研究対象によって。

人の姿をした【それ】は
獣以上に恐ろしく見えた。

「S-S-P……」

震える声で女性研究員が此方を見ている。
声を掛けられた影は無言で銃口を彼女に向けた。

「何故…? 何故、こんな酷い事を…?」
「酷い?」

マスク下のくぐもった声。

「自業自得やろ。
 散々俺等に酷い事してきたのはそっちやろが」
「私達は只、実験を……」
「【実験】と称すれば
 人の体を切り刻もうが、高圧電流流そうが
 何でも許されるとでも?」
「……」
「もう一度言う。【自業自得】や」

シーニーは容赦無く
至近距離から彼女の頭に
銃弾を一発撃ち込んだ。
何も感じられない位、苦しむ事も無く
短い時間で事切れたのは
彼のせめてもの【情け】だったのかも知れない。

= 誰一人として逃がすな。
 ……皆殺しや =

この研究所に居る者は
誰一人逃がしてはならない。
全てを徹底的に破壊する必要がある。
一切の情けは無用。
シーニーは仲間達にそう伝えている。
そしてロッソとゲールも同様に
己の心を殺して悪鬼に徹していた。

「ん?」

シーニーは奥から何かの生体反応をキャッチした。
この研究所が隠し持っていた核子が
目を覚ましたのかも知れない。

「雑魚を片付けたタイミングで現れたってか。
 随分と空気を読んでくれるやん」

彼はそう言ってマシンガンを構え直した。
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