事件ファイル No.11-7

的場一家虐殺事件・後編

肉の焼ける不快な臭いが漂っている。
其処に薬品と油の臭いも混ざり
悪臭が充満していた。
ゲールは顔を顰めながらも
何とか倒した核子の状態を確認している。

= 不完全体なら、打撃だけでも倒せそう =

初めての戦いにしては上出来だっただろうか。
そう思い、彼は立ち上がって踵を返した。
しかしその直後。

= っ?! =

触手がゲールの首に巻き付いて来た。
まるで機械の様にグイグイと容赦無く
触手はゲールの首をへし折らんばかりに
巻き付いている。
ゲールは何とか触手を外そうと藻掻もがくが
彼の力が入る程、
触手の巻き付きも強くなっていく様だった。

「ゲールっ!!」

部屋に飛び込んで来たのはロッソだった。
ゲールの状況を瞬時に判断し
ロッソは蹴りで器用に触手を切断した。

「大丈夫か、ゲール?」
= ありがと…ロッソ…。何とか、大丈夫… =
「まだ油断出来ねぇな。
 あまり無理すんなよ」
= うん…… =

ピクピクと動く核子の眼球を
ロッソは憎々し気に踏み潰した。
ブシュッと云う異音と共に
核子の赤い体液がロッソの頬を穢す。

「やはり急所は眼球…だな。
 其処さえ破壊出来れば再生は無い」
= 不完全体なら、打撃でも効果は有った…。
 僕達の力だけでも、何とかなりそう =
「そうだな。問題は完全体だ。
 触手の攻撃パターンも増えているだろう」
= 眼球に攻撃が届かない可能性も… =
「当然、その可能性は高いだろうな」

顔に付いた汚れを拭う事も無く
ロッソは淡々と述べると
静かに周囲を見渡していた。

「…鬱陶しいなぁ、あのアラーム。
 本店へ救援信号のつもりか?」
= そうかもね =
「……」

ロッソは部屋のコンソールボックスに
渾身の拳をお見舞いした。
派手な火花を散らすと、
制御装置は音を立てて爆発を始める。

= パワフルだね、ロッソ =
「ムカついてたからな」
= …そりゃそうか。
 ずっと目を付けられてたし =
「最後位大暴れしても良いだろ」
= ベルデが見たら何て言うだろう? =
「……惚れ直すんじゃない?」
= 逞しい、とかって?
 乱暴者とかじゃなくて? =
「……ゲール。
 お前、俺をそんな目で見てたんだ?」
= 僕は暴れてなかったからさ =
「それで満足だったの、お前?」
= 全然。ずっと我慢してた =
「じゃあ、今発散しちまえよ。
 外の世界じゃ又 我慢の連続だぞ」
= それもそうか。そうだね。じゃあ… =

そもそもこの反乱の目的の一つに
研究所の破壊が含まれていた事を思い出し
ゲールは開き直ったかの様に
ロッソに並んで機材や装置の破壊工作に乗り出した。
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