事件ファイル No.11-8

的場一家虐殺事件・後編

彼方此方から派手な爆発音が聞こえてくる。
誰かが装置を片っ端から破壊している。
それは音だけで充分認識出来た。

「もう直ぐ合流出来そうかな?」

シーニーの横顔を見上げながら
ベルデがそっと声を掛ける。

「何も問題が無ければ、恐らく…やけど」
「核子…だね」
「あぁ…。
 彼奴アイツ等はパワー寄りに改造されとるし
 防御力もその分高いから
 問題無いとは思うんやけど…」
「ロッソ…。ゲール……」

目の前の防火扉をシーニーがマシンガンで撃ち抜き
二人はその先の通路へと出た。

「?!」
「ロッソッ! ゲールッ!!」

二人は巨大な核子相手に苦戦していた。
敵対する者を捕らえようと怪しくうごめ
幾本もの触手を交わしながら
ロッソとゲールは
何とか攻撃を当てようと奮闘していた。

「くっ!!」

シーニーが瞬時にマシンガンを構える。
二人に当てない様、細心の注意を払いながら
彼はその場から即座に連射した。
だが、マシンガンの弾を
触手は難無く弾き飛ばしてしまう。

「ざけんなっ!!」

ロッソが果敢に攻めるも
やはり弱点の眼球には辿り着けない。
触手の生み出す壁を打ち破れないのだ。

この状態からの行射で
果たして眼球に矢が到達するのか。
それでもベルデは迷わず弦を引く。
彼女の思いが炎となって
矢の姿を変化させていく。
彼女の両の瞳も又 同時に
紫色に輝いていた。

「ベルデ…?」
= ベルデ、目の色が… =
「……」

ベルデが弓を射った。
炎が真っ直ぐに核子目掛けて飛んでいく。
マシンガンの攻撃と同様に
触手は眼球を守るべく怪しい動きを起こして
大きな壁を作り上げた。
炎の矢の先端が
触手の壁に接触したと思われる瞬間
何かの溶ける臭いが周囲に充満した。

「……突き抜けた」

ロッソはその【目】で
炎の矢が眼球を貫いている様を確認した。

「……った」
= えっ? =
「仕留めたよ、ベルデが……」
「……」

貫かれた部分から猛烈な勢いで燃え上がる炎の柱。
巨大な触手が悶える様に動き回り
その勢いで彼方此方を破壊する。

「ベルデッ!!」

ボンヤリと燃え盛る核子を見つめるベルデの頭上に
天井の瓦礫が降り注いでくる。
ロッソは瞬時に彼女に近付くと
そのままその細い体を抱き上げて安全圏迄避難した。
ベルデが立っていた地点はあっと言う間に
瓦礫の山に埋まってしまった。

「ロッソ……」
「怪我は無いか?」
「ん…。助けてくれて、ありがと」
「助けられたのは寧ろ、俺達の方だ」
「…?」

抱き上げられたまま
ベルデはシーニーとゲールを見つめる。
二人共笑顔で静かに頷いていた。

そして、ベルデの瞳の色が
先程の紫色から戦闘中に見せる緑色へと変化していた。
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