事件ファイル No.12-1

Rosso 破壊命令

最近、【未来】を見通せなくなっている。
いや、正確には
GvDに関しての未来に限定して、だ。
作戦を立てるのも楽じゃない。
こうして一人、俺だけで悩んでいても
仕方が無い事なのだが…。

「どうしたの?」

珍しくバルコニーで珈琲を飲んでいると
ベルデが声を掛けて来た。

「ん? いやぁ~、一寸悩み事」
「どんな事?」
「…予知夢が見れん」
「予知夢…?
 未来予知が出来ないって事なのね…」
「全部やないで。
 資金調達に関しては問題あらへん」
「じゃあ、見れなくなっているのは…」
「そう。GvDに関して、やな」
「そっか……」

ベルデは腕を組んで
暫し何かを考えている様だった。

「それに関しては、結構前から
 全然見られないって言ってるよね?」
「そうやったっけ?」
「うん。私はそう記憶してる。
 多分『希望的観測』が入っちゃうと
 予知そのものが狂ってしまうからね。
 自己防衛の意味から
 誤った情報に左右されない様
 事前に遮断しちゃってるのかも」
「成程なぁ~」
「納得した?」
「したした!」

俺の思いが強く反映される案件は
そもそも予知夢として見る事が出来ない。
彼女はそう推理したのだ。
流石にそれは盲点だった。
遠隔で奴等の情報を掴むのも
やはり限度が有ると云う事なのだ。

「よし! そうなると
 動いた方が良さそうやな」
「えっ?」
「水間ちゃんからデートのお誘いがあったんでな。
 受けて立つわ」
「…甲斐さん」
「もう、そう云う風に呼んでくれるんやな」

俺は照れ臭さを誤魔化すかの様に
鼻の頭をポリポリと掻いた。
彼女はそれを見て楽しそうに笑っている。
過去に見た資料の通り、いや それ以上に
聡明さと優しさに溢れた少女。
それが…志穂なんだと感じ取る。

「気を付けてね。
 この間、晋司とバチバチになってたから」
「一触即発やってんてな」
「そうなの」
「その辺は俺も解っとる。
 正直、鷹矢絡みは一度確り探りを入れたいんや。
 水間…彼奴アイツの鷹矢に対する【憎悪】は
 一体何処から来とるのか」
「……」
「何で鷹矢を目の敵にしとるのかが判れば
 対処のしようもあるやろうし」

俺はそう言ってベルデにウィンクを送った。
彼女も安心してくれたのか
笑みを浮かべ、確りと頷き返してくれた。

この笑顔を見ているだけで俺も安心出来る。
彼女の不安材料は
何としてでも、少しでも取り除いておきたかった。
それはきっと、俺だけの感情じゃない。
他の二人も、きっと同じ事を口にするだろう。
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