事件ファイル No.12-2

Rosso 破壊命令

3日後。都内某喫茶店。

お決まりのスリーピーススーツ姿。
シーニーは珈琲に舌鼓を打っていた。
黙して語らず、
只 珈琲の味と香りを楽しんでいる。

「待たせたな」

その声に対して
シーニーは視線だけを上に向けた。

「久し振り。
 真面に会うのは何年振りだ?」
「17年振りちゃうか?
 俺が死んでからずっと疎遠やったろ」
「そうか…。もう、そんなになるか…」
「…座ったら?
 立ち話もなんやし」
「…そうだな」

水間はそう答えると
シーニーの対面に座った。
近付いて来たウェイトレスに
ホットのブレンドコーヒーを注文すると
頬杖をついてシーニーを見つめた。

「…何や?」
「…本当に17年前の姿そのものだな。
 少しは成長したりするのか?」
「俺は志穂と違うからなぁ。
 未成年で亡くなってたら
 まだチャンスあるかも知れんけど、
 何せ俺が死んだんは28歳やったから」

淡々としたシーニーの口調だが
水間は何処か嬉しそうだった。

「…今の【仕事】は、しんどいか?」
「?」

シーニーの問い掛けに水間は首を傾げる。

「公安も結構しんどかったと思うけど
 それでも俺は割と楽しんでた」
「俺もだ。あの頃は楽しかった」
「今は?」
「……」
「お前も『こう云う所』はあの頃のまんまなんやな。
 物凄ぅ判り易いわ」
「甲斐」
「そりゃ面白無いわな。
 GvDの使いっ走りみたいな役目」
「此処でその名を出すな」
「その話をしに来たんかと思ってたわ。
 俺はな」
「…お前こそ、何も変わらない。
 何も変わっていない。
 己の信念に真っ直ぐに向き合う姿勢。
 心の強さ。揺るがない思い」
「…買い被り過ぎやで」
「……」

テーブルに届いた珈琲で喉を潤し
水間は静かに瞳を閉じた。

「何時からや?」
「?」
「GvDがお前に接触したのは
 何時頃なんや?」
「甲斐……」
「俺が志穂の件を嗅ぎ回っとる時
 お前、ヤケに止めとったよな?
 その頃には既に…」
「……」
「…やっぱり、そうやったんやな。
 あの時点では、もう……」
「…俺に選択肢は、無かった」

水間はそう言うと溜息を吐いた。

「抗えなかった」
「…瀬戸」
「その名も、懐かしいな…」

水間は自嘲気味に笑みを浮かべる。
悲し気な笑顔。
シーニーは静かに水間を見つめている。

「あの頃に…戻れたら……」

水間はポツポツと
自身の過去を語り出した。
GvDとの繋がり、その切っ掛けを。
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