事件ファイル No.12-19

Rosso 破壊命令

「妙子さん」

ベルデはそっと妙子に声を掛けた。

「なぁに? 志穂ちゃん…」
「晋司をそのまま今迄通りの人間として
 復活させる事は出来ない。
 それは、さっき甲斐さんが言った通り」
「NUMBERINGとしても、難しいのね…」
「えぇ。今の彼は既に死んでいる状態なの。
 何度も死者を復活させる事は流石に出来ないわ。
 素体である体が損傷していれば、尚更」
「じゃあ、どうやって…?」

ベルデは悲し気な笑みを浮かべたままだ。
妙子はその表情から、彼女の伝えたい言葉を知った。

「覚醒者…?
 晋も、志穂ちゃんと同じ存在に……」
「ベルデ……」
「完全に人ではなくなってしまう。
 鷹矢 晋司と云う【人間】が…
 この世界から消え去ってしまう…」

苦しげに、ベルデはそう言った。
だが、妙子はフッと笑みを浮かべると
力強くベルデの両手を取った。

Con te貴女と共に.
 それが、晋の…願い。
 この世界で自分の存在を認めてくれた
 貴女の為だけに生きて来た彼の
 たった一つの、本当の願い……」
「妙子さん……」
「お願い、志穂ちゃん。
 もう一度だけ、晋に会わせて……」
「しほちゃん……」

和司がカプセルから離れ
ベルデの許へとやってくる。

「パパと、おはなししたいの。
 パパに…あいたいの……」
「和司君……」
「その願いが叶うのなら、俺からも頼みたい」
「阿佐…」
「このままで終わらせられないんだ。
 水間さんの事だって
 やられっぱなしで気が済む訳無いよ。
 あのロッソだぜ? 自分でケリをつけたい筈さ」

阿佐はそう言ってシーニーに微笑んだ。
シーニーも阿佐に応える様に笑みを浮かべる。

「俺達はもう、何処にも戻る場所なんてあらへん。
 この四人だけが、唯一の居場所やった」
「うん…。ずっと、四人で戦って来た」
「私達は、もう【家族】よ」
「妙子さん…?」
「私達は皆
 この【Cielo blu in paradiso】を住処とする家族なの」

妙子の言葉に、ベルデは力強く頷いた。
そしてカプセルで眠る愛しい男に贈る言葉。

Con te貴方と共に.
 今度こそ、私が貴方を護るわ。
 貴方が大切に想う人達と共に」

= …あり、がとう…… =

「「?!!」」

聞こえてこない筈のロッソの声が
その場に居た全員の脳に直接響いて来た。

「魂は不滅。想いは、決して潰えない。
 私は、人類を滅ぼしたくない。
 だから人類の存続を願う…。
 それが…審判の女神との間に交わした【約束】なの」
「志穂ちゃん…?」
「私は、人類を守る為に女神と契約したの。
 この能力ちからを、この惑星ほしに住む人々の為に使うって。
 そして…」

カプセルに寄り添いながらベルデが続ける。

「水間は、死なせない。絶対に」
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