事件ファイル No.12-3

Rosso 破壊命令

阿倍 亮平は行方不明届を出されていた。
小学校からの帰り道で行方を晦ました。
その後、何の情報も集まる事は無く
やがて彼の戸籍は失踪宣告成立後、消滅した。

戸籍上は死んだとされる阿倍だったが
行方不明から10年後
瀬戸 亮兵として、第二の人生を歩んでいた。

「公安で俺と知り合ったのはその頃、か」
「瀬戸として生きて来たのは中学からだ」
「成程。行方不明の間に別人として生きてきた、と。
 しかしそんな事、幼い子供一人で
 考えられるとは思えんなぁ…」
「……」
「お前を攫ったんは…GvDって事なんやな」
「当時は、まだその様な名称では無かったが…
 確かに…そう云う事にはなるか」
「そんな大昔から他人の生き様を面白半分で
 弄ってきよった訳や。奴等は」
「……」
「クソ共が…っ」

怒りの感情を隠そうともせずに
シーニーが短くそう言い放った。
彼の激高を直視出来ず
水間は視線を自身の珈琲へと移した。

* * * * * *

「阿佐は水間の事、何処まで知ってるの?」

【Cielo blu in paradiso】のホールで
ベルデが声を掛けて来た。

「あの人は秘密主義だったし
 上司でもあったからね。
 正直言うと、プライベートの事は
 何も知らないんだよ」
「そっかぁ~」
「頼り無くて御免な。本当に…」
「そりゃ無理もねぇだろ」
「ロッソ…」

厨房で作業をしながら
ロッソが会話に参加してきた。

「奴が口を開くって事は
 組織にとっても都合が悪い事だ。
 況してやお前をスパイとして潜り込ませる以上
 不必要な情報は与えたがらんだろう」
「それは確かにそうなんだが…」
「怖かったのもあるかも」

今度はゲールが会話に加わってきた。

「怖かった?」
「阿佐に嫌われるの。水間は恐れてたかも」
「そうかなぁ~?」
「高須賀さんの言う事、あり得るかも。
 ね、晋司」
「…甲斐の発言、か」
「えぇ。『瀬戸は寂しがり屋』」
「一人で居る事に対し、異様に怯えてた…。
 成程なぁ…。確かに、それは言えるかも」
「そう考えると、今の水間の状態は
 余り良いとは言えないのよね」
「此方側に寝返ってくれないかしらね?」
「はぁ~? 妙子、それマジで言ってんのか?」
「生憎、私は貴方達とGvDの間柄をよく知らないから。
 只 阿佐君の事を考えても
 その水間さんが敵対してるのは
 余り好ましくないと思って」
「阿佐の為…ねぇ~?」
「何よ、晋。もしかして…ヤキモチ?」
「違うわいっ!!」

妙子の言葉にムキになり反応するロッソに
その場の全員が大笑いした。
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