事件ファイル No.12-6

Rosso 破壊命令

それから暫く、水間やGvDに目立った動きは無かった。
尤もGvDが明確な動きを示した事等
今迄 只の一度も無かった訳だが。

あの日。
意気消沈して帰って来たシーニーの様子から
水間との決別を阿佐は一人痛感していた。
嘗ての相棒であるシーニーの言葉でさえ
彼は聞き入れなかったのだろう。

「水間さんは…一体どうしたいんだ?
 あの人は、何を望んでいるんだ?」

それを知ってどうにか出来る訳では無い事位
阿佐にだって解っている筈だった。
それでも、出来れば彼とは敵対したくない。

「例えこの感情が『愚かなもの』だったとしても…
 俺は最後迄、諦めたくないんだ……」

歯を食い縛り、阿佐は込み上げてくる負の感情を
懸命に押し殺そうと藻掻いていた。

* * * * * *

「…報告は以上です」

水間は一人、スマートフォンで誰かと会話をしていた。
その表情は氷の様に冷たい。

『いつもご苦労様。
 甲斐は此方に靡いてくれなかったか』
「申し訳有りません。
 昔話でも出せば、此方に傾くかと思いましたが…」
『情報通り、頭の固い男の様だ。
 だが…それでこそ、行動も読めると云うもの』

通話の向こう側でカタカタと機械が動く音がする。

『未来を導き出す我等の【神】の啓示通りに
 全ては動かなければならない』
「御意に」
『大御所もその様に仰っている』

水間の眉が一瞬だがピクリと動いた。

『新しい世界の創造を』

自身の言葉に酔いしれる様に。
声はそう言って通話を終了した。

* * * * * *

最近外出しがちなシーニーの代わりに
ベルデが彼の部屋に入り浸っている。
彼の所有するPCを操作し
何かを懸命に探している様子だ。

「何を探してるの?」
「探してるんじゃなくって…
 様子を伺ってるの」
「何の?」
「今、シーニーは
 日本支部の動きだけに気を取られてるから…
 海外に潜むGvDの動きを、ね」
「へぇ~!」
「自分が出来る事で皆のお手伝いがしたいの」
「凄いなぁ…」
「そんな事無いよ」

ベルデはそう言って笑っている。
ゲールは先程から感心し切りだ。

「高須賀さん。
 少し、手伝ってもらえるかな?」
「良いよ。それとね」
「えっ?」
「【研斗】って呼んで良いよ」
「研斗…さん?」
「そう」
「じゃあ、私の事も【志穂】って呼んでね」
「志穂ちゃん」
「嬉しい! 何か、漸く私達 【家族】に成れたね」

本当に嬉しそうにベルデは笑顔を浮かべている。
彼女の言う通り、漸く自分達は
自分達の望み通りの関係に成れたのだろう。
もう寂しくない。
そう思うだけで、ゲールは胸が温かくなった。
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