事件ファイル No.12-7

Rosso 破壊命令

「妙子、お前今何処だよ?」
『帰りたいのは山々なのよ!
 だけど一寸トラブっちゃって…。
 お願い、晋!
 和司を迎えに行ってやってよ』
「そりゃ行くけどさぁ…」

やれやれと首を回しながら
ロッソはスマートフォンの会話を終えた。
時計を見てギョッとする。

「ヤバッ! そろそろ時間じゃねぇか!
 妙子の奴、ギリギリにも程があるだろ」

ロッソは大慌てて身支度を整えると
そのまま足早に店を後にした。
厨房のカウンターには
真っ赤なボディーである
彼のスマートフォンが置かれたままだ。

* * * * * *

「迎えに行くって言ってたのにッ!!」

【Cielo blu in paradiso】のホールでは
妙子が怒り心頭の状態だった。
結局、和司はベルデとゲールが
保育園迄迎えに行った。

「約束を反故にする様な男じゃないけど…」
「そうなのよ。
 保育園の先生方にも聞いたんだけど
 晋司の姿は見掛けなかったって」
「保育園にも行かないで
 何処ほっつき歩いてんのかしら?」
「…気になるの」

ベルデはそう言って
顎に手を当て、下を向いた。

「【声】が…聞こえてこない……」
「声?」
「何も聞こえないの。晋司の声が。
 こんな事、一度も無かった……」
「志穂ちゃん…?」
「和司君を迎えに行く途中で
 きっと何か遭ったんだと思う」
「…誘拐、になるのかな?」

ゲールの呟きに、一同の表情が一斉に強張る。

「…水間?」
「ベルデ? まさか、水間さんが?」
「判らない。でも……」
「その可能性はデカイな」
「甲斐さん!」
「シーニー!」
「シーニーさん、じゃあ…晋は」
「GvDに拉致られたんかもしれん」
「そんなっ…」
「とはいえ、何処に攫われたんかも判らんと
 助けにすら行けんのが…」
「志穂ちゃん、声以外で
 鷹矢の居場所に繋がりそうな音、聞こえる?」
「それが…全く聞こえないの。
 何かに遮断されている様な感じ」
「遮断?」
「そう…。ブロックノイズが発生してるのかな?」
「……」

シーニーの顔つきが一層険しくなる。

「脳波制御食らっとるんかもしれんな」
「脳波制御?」
「あぁ。彼奴、研究所で拷問食らった際
 確か、脳にチップを埋め込まれとるんや」
「えっ?!」
「そのチップが悪影響を?」
「俺もどんなチップが
 埋め込まれてんのか知らんのや。
 だが、ブロックノイズを
 発生させられる種類やと
 それなりに数は限られとる」
「じゃあ、その種類は…」

阿佐の問い掛けに、シーニーは悲痛な表情を浮かべた。
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