事件ファイル No.13-10

宣戦布告

人形ひとがた軍団との激闘が続く。
ロッソを塔に突入させる為
ゲールは一人果敢に前へ出た。
己の全てと向き合った彼の成長はいちじるしく
最強と名高いロッソに引けを取らない。
ゲールは阿佐を守りながら
無数に現れる人形ひとがたを確実に破壊していった。

「ロッソ! 行けそうなら出てくれっ!!」
「あぁ! 阿佐、お前は無理するな!
 危険と判断したらゲールに任せて退けっ!!」
「解ってるっ!!」
「ロッソ、阿佐の事は僕に任せて!
 必ず守り抜くからっ!!」
「頼んだぞ、ゲールっ!」

人形ひとがたの作り出す防衛の壁が一瞬崩れた。
その隙を見逃す事無く
ロッソが一気に壁を突き抜ける。
そのまま彼は塔の中へと姿を消した。

「ロッソ…、頼む。
 水間さんを、助けてやってくれ…っ!」

* * * * * *

昔、写真で見ただけの宇宙。
こうして今、広大な空間に漂っているのが夢の様だ。

「不思議ね……」

足元で輝く青い惑星ほしを眺めながら
ベルデは静かにその時を待っていた。
彼女の全身がまるで蛍の様に淡く紫色に点灯している。
その灯りに誘われる様に姿を現したのは
各地から日本に向かって発射された
弾道ミサイルの数々。

「さぁ…いらっしゃい。
 誘ってあげる。永遠の漆黒やみへ」

ベルデは胸の前から真っ直ぐに
両掌を突き出した。
彼女の手のひらから巨大なホールが出現する。
ブラックホールの様でいて少し異なる。
このホールは弾道ミサイルだけを
選別して飲み込んでいるのだ。

全ての弾道ミサイルを飲み込んだホールは
役目を終わったと判断したのか
静かにその場から姿を消した。

ベルデは全てを見届けると
今度は青い惑星、地球へ向かって
ゆっくりと降下していく。
大気圏を抜けた瞬間に解除から
大きな白い翼を携えた姿へ変貌を遂げる。
その翼で全身を包み込み落下する姿は
今度こそ、流れ星の様に見えた。
海面に到着する寸前、翼を展開し
ベルデは海の上に立つ様に空中で浮かんでいた。

* * * * * *

「お疲れさん」
「シーニーも、お疲れ様」
「宣言通り、全部撃ち墜としたったで!」
「解除状態のシーニー相手にするには
 どう考えても無謀だったわね。
 パイロットが人形ひとがたで良かったかも」
「どう云う意味?」
「生身の人間だったら気の毒ねって」
「相変わらず優しいなぁ~。
 慈愛の女神様って感じや」
「私の事、そう云う風に見てたの?」
「俺だけやないで。
 男連中、全員そう」
「……何だか、恥ずかしいなぁ~」

戦闘服のシールド越しに
ベルデの柔らかな微笑みが見える。
シーニーは静かに頷くと
視線を問題の塔へと向けた。

「さて、俺等も向かうか。
 …【瀬戸】が待っとる」
「そうね。皆で迎えに行こう!」
「…あぁ」

力強く頷き合うと
二人は猛スピードで
塔へと向かって飛び立った。
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