ロッソを塔に突入させる為
ゲールは一人果敢に前へ出た。
己の全てと向き合った彼の成長は著しく
最強と名高いロッソに引けを取らない。
ゲールは阿佐を守りながら
無数に現れる人形を確実に破壊していった。
「ロッソ! 行けそうなら出てくれっ!!」
「あぁ! 阿佐、お前は無理するな!
危険と判断したらゲールに任せて退けっ!!」
「解ってるっ!!」
「ロッソ、阿佐の事は僕に任せて!
必ず守り抜くからっ!!」
「頼んだぞ、ゲールっ!」
人形の作り出す防衛の壁が一瞬崩れた。
その隙を見逃す事無く
ロッソが一気に壁を突き抜ける。
そのまま彼は塔の中へと姿を消した。
「ロッソ…、頼む。
水間さんを、助けてやってくれ…っ!」
昔、写真で見ただけの宇宙。
こうして今、広大な空間に漂っているのが夢の様だ。
「不思議ね……」
足元で輝く青い惑星を眺めながら
ベルデは静かにその時を待っていた。
彼女の全身がまるで蛍の様に淡く紫色に点灯している。
その灯りに誘われる様に姿を現したのは
各地から日本に向かって発射された
弾道ミサイルの数々。
「さぁ…いらっしゃい。
誘ってあげる。永遠の漆黒へ」
ベルデは胸の前から真っ直ぐに
両掌を突き出した。
彼女の手のひらから巨大なホールが出現する。
ブラックホールの様でいて少し異なる。
このホールは弾道ミサイルだけを
選別して飲み込んでいるのだ。
全ての弾道ミサイルを飲み込んだホールは
役目を終わったと判断したのか
静かにその場から姿を消した。
ベルデは全てを見届けると
今度は青い惑星、地球へ向かって
ゆっくりと降下していく。
大気圏を抜けた瞬間に解除から
大きな白い翼を携えた姿へ変貌を遂げる。
その翼で全身を包み込み落下する姿は
今度こそ、流れ星の様に見えた。
海面に到着する寸前、翼を展開し
ベルデは海の上に立つ様に空中で浮かんでいた。
「お疲れさん」
「シーニーも、お疲れ様」
「宣言通り、全部撃ち墜としたったで!」
「解除状態のシーニー相手にするには
どう考えても無謀だったわね。
パイロットが人形で良かったかも」
「どう云う意味?」
「生身の人間だったら気の毒ねって」
「相変わらず優しいなぁ~。
慈愛の女神様って感じや」
「私の事、そう云う風に見てたの?」
「俺だけやないで。
男連中、全員そう」
「……何だか、恥ずかしいなぁ~」
戦闘服のシールド越しに
ベルデの柔らかな微笑みが見える。
シーニーは静かに頷くと
視線を問題の塔へと向けた。
「さて、俺等も向かうか。
…【瀬戸】が待っとる」
「そうね。皆で迎えに行こう!」
「…あぁ」
力強く頷き合うと
二人は猛スピードで
塔へと向かって飛び立った。