事件ファイル No.13-9

宣戦布告

地上から大空に解き放たれた一条の光。
それは、重力に逆らう流れ星の如く。

解除状態となったベルデが
弾道ミサイル目掛けて飛行を開始した。
彼女に追従する様に飛ぶ黒い影は
同じく解除状態となったシーニー。
二人を迎撃せんと現れる戦闘機を擦り抜け
ベルデはどんどん高度を上げていく。
逆にシーニーは戦闘機と相対すべく
高度を固定し銃器を構えた。

= 此処は任せとき! =

シーニーのメッセージを受け、
ベルデは更に上昇して行く。
シーニーは回転を加えながら飛行速度を上げ
戦闘機に目掛けて突撃する。
空中でのHit and Away戦法。
自由自在に空を舞うシーニーの動きを
戦闘機は捕捉出来ずにいる。

人形ひとがたでは此処迄追えまい!
 人類、舐めんなよっ!!」

シーニーの飛行速度が更に上がる。
速度だけではない。
移動パターンも複雑化し、計算が追い付かない。

「全て此処で墜としたる!
 覚悟しとけっ!!」

まるで青い稲妻。
その言葉通り、シーニーは確実に
戦闘機を一機、又一機と撃墜していった。

* * * * * *

ベルデとシーニーが空中戦を開始する直前。
彼はロッソ・ゲール・阿佐を
最近埋め立てられた空地へと転送していた。

「あれが、問題の塔…か」
「鉄格子で取り囲んである。怪しい」
「二人共! 出て来たぞ!」

塔の入口からゾロゾロと現れる
白い戦闘服に身を包んだ集団。

「生体反応は…微かに有るな」
人形ひとがたの中にNUMBERINGが混ざってる?」
「可能性は有る。
 まぁ、るなら同じだけど」
「そうだね」
「あの塔への侵入経路は…」
「正面突破だ」
「えっ?」
「中に瀬戸が居るってんなら、猶予は無い。
 さっきから嫌な予感がしやがる。
 此処はオマケに空気が悪ぃ」
「「?」」

恐らくこれは、ロッソだけが感じ取れる気配。
彼はその意味を、何となくだが理解出来ている。

「阿佐。お前はなるべく人形ひとがたを狙え」
「うん。今の阿佐なら人形ひとがたは倒せる。
 NUMBERINGとの違いも判る筈」
「…判った。
 NUMBERINGの方は二人に任せるよ」
「任せろ」

ロッソは突然振り返ると
ヘルメットのシールドを上げて阿佐を見た。
赤い瞳が優しく輝いている。

「何、ロッソ?」
「お前は、生き抜け」
「ロッソ……」
「絶対にこんな所で死ぬんじゃねぇぞ。
 これ以上、妙子を悲しませたくない」
「…勿論だ。誓うよ、ロッソ。
 俺は絶対に死なない。
 …生き抜いてみせるさ!」

ロッソは満足そうに微笑み、力強く頷くと
シールドを下げて戦闘態勢に入った。
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