事件ファイル No.13-15

宣戦布告

「貴方の望む【不老不死】も
 その欲望を未来永劫享受する為に。
 ならば、その【夢】だけは
 叶えてあげましょう」

ベルデの言葉に反応し、
【Memento Mori】の三人が突然駆け出し
塔を三方から囲む様に立った。

『的場…志穂ォ……』

「私は貴方の【者】には成らない。
 決して、それは叶わない」

* * * * * *

「えっ?」
「元々、純一が最初に望んだのは…志穂だった」
「水間、さん…?」

「【G-Cell】を持つ少女と言われていた、的場 志穂。
 彼女の個人情報を目にした純一は
 志穂を自分の女にしようと企てた。
 彼女を殺す様に命じ、その遺体を凌辱し…
 永遠に彼女を自分だけのものにしようとしていた」
「それを、【Memento Mori】は……」
「多分、知ってしまったんだろうな。
 だからこそ、彼奴アイツ等は必死に志穂を取り戻した。
 研究対象としてだけではない志穂の真の価値を
 彼奴アイツ等はちゃんと理解出来ていたんだ。
 一人の女性としての的場 志穂に…惚れていたんだ」

「水間さん…。貴方は……」
「甲斐との約束を果たしたかった。
 これ以上志穂を心身を、尊厳を
 傷付けられる訳にはいかなかった。
 だから、純一の所有する施設ではなく
 T地区研究所へ彼女を匿い…
 【Memento Mori】達が復活した際に
 すぐ合流出来る様 細工をした」
「…そう、だったんですね……」
「俺も信じたかったんだ。
 甲斐達の復活を……」
「…水間さん」
「俺は、【瀬戸 亮兵】。
 別名、【Schneckeシュネッケ型 SSダブルエス Kreuzクロイツ】」
Kreuzクロイツっ?!」
「ランク【SS】のNUMBERINGだ。
 【Memento Mori】にはワンランク劣るが」

そう言って水間、いや 瀬戸は笑っている。
初めて見る、彼の自然な笑みに
阿佐も釣られて微笑んでいた。

「改めて、宜しく頼む」
「此方こそ。…瀬戸さん」

阿佐は彼と固く握手を交わした。
これから共に力を合わせて戦っていく相棒。
阿佐には、彼がその様に映っていた。

* * * * * *

獣の咆哮が周辺に響き渡る。
塔を囲む三人も、その場を動かないベルデも
全く動じる事が無い。

「阿佐」

不意にベルデが振り返り
背後に居る阿佐と瀬戸に微笑んだ。

「今迄、色々とありがとう」
「ベルデ…?」
「【Cielo blu in paradiso】をお願い。
 それと、妙子さんや和司君と幸せに…ね」
「ベルデ…。当たり前だろ?
 何だよ、急に……」

それはまるで【最期の別れ】の様だ。
嫌な予感が阿佐の胸に去来する。
彼女の許へ駆け出そうとするが
それを瀬戸が阿佐の腕を掴んで制した。

「瀬戸さん…?」
「行かせてやって欲しい」
「……」
「瀬戸さん」

ベルデの呼び掛けに、瀬戸が頷く。

「後はお願いね」
「あぁ。俺の体の耐久が尽きる迄」
「お前は俺が簡単に終わらせたらへんわい!
 偶にちゃんとメンテしたるから安心せぇ!!」
「それを聞いて安心した」

此方を一瞥する事も無く言い放つシーニーに
瀬戸は満足そうな微笑みを浮かべていた。
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