事件ファイル No.13-16

宣戦布告

塔から手足の様に伸びてくる触手。
其処彼処から現れる数々の赤い瞳。
シーニーが【生命体】と言い当てた様に
塔はその正体を現して【Memento Mori】に
襲い掛かろうとしていた。

ベルデの背中の羽根が真っ赤な炎に包まれる。
真っ白な羽根が徐々に炎に由ってその姿を変えていく。

「炎の…翼?」
RED真紅の PHOENIX不死鳥……」

瀬戸の呟きに、阿佐は無言で頷いた。
ベルデが軽く地面を蹴ると
彼女は一瞬にして塔の遥か上空へ
その身を躍らせる。
右手を天に掲げ、それを思い切り振り下ろすと
【Memento Mori】を巻き込んだ形で
塔を中心に炎の壁が出現した。

「ベルデっ!!」

彼女達はこの炎の壁の中で
塔、いや 渡邊 純一を始末する気なのだ。

「裁きの炎が発動した。
 最早、決着は付いたよ……」
「瀬戸さん……」
「GvD日本支部は壊滅だ。
 もっとも、内部崩壊した状態で
 組織の体すら維持出来ていなかったが」
「じゃあ、貴方に指示を出していた存在も
 もう居ないって事ですよね?」
「そう云う事になるな…。
 俺に指示を出していたのは純一の父親だと
 ずっと騙されていた訳だが……」
「なら、貴方はもう自由だ」
「阿佐…」
「貴方はこれから、貴方自身の思いで
 守りたい人を守れば良い。
 それがきっと、【Memento Moriベルデ達】の願いだから」
「俺の守りたい人は、もう決まっている」
「え?」
「彼の守りたい者を、俺も守るだけだ」

瀬戸の話す『守りたい者』。
それが自分で在ると云う実感。
素直に、嬉しいと感じる。

「俺も、同じだから。
 大切な存在を、相棒パートナーを守る。
 後悔しない為にも」

阿佐の言葉に、瀬戸は満足そうに頷いた。

* * * * * *

壁の内側は灼熱と化していた。
大量の汗を流しながら
【Memento Mori】の三人は
手にした炎の弓矢で触手を破壊する。
その度に断末魔の叫びが木霊した。

「得意の【計算】はどうだっ?!
 何も出来ず仕舞いで悔しいだろっ!!」

嗤いながらロッソが叫ぶ。
これで漸く自分の復讐が終わる。
散々奪われ続けてきた彼の復讐が。
そう思うと、笑いが止まらない。

= 悪い癖が出とるわ、鷹矢の… =
= 無理も無いけどさぁ… =
= 気持ちは解らんでも無いけどな。
 まぁ、今回は後始末考えんでもえぇし
 俺の知ったこっちゃない =
= 甲斐さんも悪い癖、出てない? =

シーニーもゲールも、
自身の高揚感を否定出来なかった。
この残酷な懲罰行為を
何処かで楽しんでいる様にも思えた。
それがシーニーには少し堪えていた。
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