事件ファイル No.13-17

宣戦布告

= 嗚呼、もう【人】やないって事やなぁ… =

ふと、寂し気にシーニーが
そんな事を口にする。

= それは逆だよ =
= 逆? =
= そう、逆。
 僕達はやっぱり、神様には成り切れない =
= 高須賀…… =
= 根っ子は人間なんだ。
 だから、それで良いんだよ。きっと =
= …高須賀 =
= 何? =
= …おおきに。
 俺、NUMBERINGに成れて
 ホンマ良かったと思っとる =
= 奇遇だね。僕もだよ =
= そうか? =
= うん。こうして皆と知り合えて
 一緒に戦えて、幸せ! =
= 戦い以外の幸せも、一緒に見付けていこな =
= うん!! =

不意に二人は視線を上空に向けた。
ベルデが次の攻撃に移ろうとしている。

= 鷹矢! 上っ!! =
= 上? =
= 裁きの炎が降って来る! =
= 退避っ!! =

シーニーの号令にロッソとゲールが従う。
三人が壁ギリギリ迄退避を完了すると
ベルデは己の右腕に出現した青白い炎を
塔目掛けて振り下ろした。
まるで雷に打たれたかの様だ。
瞬時に塔は青白い火柱に包まれた。
ジワジワと焼かれ、溶かされていく。

『イダイ! アヅイ! イダイィィーーーッ!!』

渡邊 純一の悲鳴が響き渡る。
機械を通した不快な声。
【Memento Mori】は無言でその有様を見ていた。
冷めた眼差しを向けたまま身動き一つ無く。

『イヤダァーーー! ジニダクナイィィーーー!
 ジヌノイヤァーーーッ!!』

「勝手な事言ってやがる」

吐き捨てる様にロッソが呟いた。

「死にたくなかったのは俺達の方だっての」
「ホンマやわ。
 お前の御都合主義の所為で
 こっちは惨い死に様晒しとんねん」
「自分だけ死にたくないって
 本当に虫が良過ぎる」
「…志穂?」

ロッソの目に空中から舞い降りて来たベルデの姿が留まる。
彼女は穏やかな表情を浮かべたまま
炎の柱と化した塔の成れの果てに近付いて行った。

『ダズゲデ…。ジニダク、ナイィ…。
 イダイィ…アヅイィィーーーッ!!』

「……」

ベルデは何も返事をしない。
穏やかな表情のまま
静かにソレを見つめているだけだ。


『ダズゲデ…。ジニダク、ナイィ…ィィーーーッ!!』

まるで壊れたレコードプレイヤーの様に
渡邊 純一は同じ言葉を何度も響かせる。
だがその言葉でさえも既に壊れている。

「貴方は、死なない。
 もう…死ぬ事は無い」

ベルデの言葉に【Memento Mori】の三人は顔を見合わせた。

「志穂ちゃん……?」
「志穂…?」
「成程。そう云う事か」
「どう云う事、甲斐さん?」
「これが渡邊 純一の罰や。
 温和な志穂にしては強烈な仕置きやな」
「…あぁ、そう云う事か」

どうやらロッソも今のシーニーの一言で
ベルデの思惑が理解出来たらしい。
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