事件ファイル No.13-6

宣戦布告

違う! 俺の望みはそうじゃない!
俺は…そんな事を望んでいた訳じゃない!
ただ、守りたかっただけだ!
彼奴アイツが守ろうとしていた少女志穂を…
俺も、俺も守りたいと思っただけなんだ!!

帰りたい…。
帰りたいんだ…。
此処に、俺の居場所は無い。
最初から、居場所なんて存在していなかったんだ。
帰りたい…。
俺の、俺だけの居場所へ…。
俺を待ってくれている、人達の許へ……。

* * * * * *

「通信?」

シーニーはホールに設置してある
モニターのシグナルに気付いた。
何かの着信が入ったのだ。

「もしかすると…」

彼は急いで回線を開く。
画面に現れたのは真神親子だった。

「真神教授!」
「勇人! 元気だったか?」
『うん、ロッソお兄ちゃん。
 僕達、元気に暮らしてるよ』
『突然、御免なさい。
 私達を保護してくださった方の消息が
 全く掴めなくなっているんです』
「水間 次郎の、ですか?」
『はい。それと前後して
 私達の周辺も慌ただしく……』
「解りました。直ぐに其方へ向かいます。
 今は怖いかも知れませんが、
 その場からお二人共動かん様に」

シーニーはそう言うと、
背後に居る仲間達へ目配せする。

「【Cielo blu in paradiso此処】に避難してもらう。
 この世の中で、一番安心出来る場所や」
「瀬戸が居ない今、勇人君達が危ない。
 僕達が守らないと!」
「頼んだぞ、甲斐」
「お願いね、甲斐さん!」
「任せとけ!」

シーニーは発信源の探索を終えると
その場で精神集中を始めた。
雑念を消し、唯一つの目的のみ脳に刻む込む。
シーニーの姿が徐々に
背景に溶け込む様に消えていく。
あまり時間が無い事を考慮して
彼は瞬間移動テレポーテーションを用いたのだ。

「恐らく、以前よりも
 能力が使い易くなってる筈だ。
 覚醒した俺達に不可能は無い」

ロッソがそう言って微笑んでいる。
この戦いを前に
【Memento Mori】は全員、覚醒に踏み切った。
覚醒すると云う事は、
これから永遠に【半人半神】で生きていくと云う事。
もう人間には戻れない。
それを覚悟しての決断だった。

「後悔は無い」
「うん。これでもっと、皆を護れる様になった」

そう言って笑うロッソとゲールの笑顔が眩しい。

数分後、必要な書類を胸に抱いた
真神教授や勇人と共に
シーニーが姿を現した。

「甲斐!」
「ふ~。間一髪。
 思った以上にGvDがバタバタ動いとる」
「どう云う事?」
「奴等にとって想定外の事案が発生したみたいや」

意味深に笑うシーニーは
真神教授と顔を見合わせ、頷いた。

「皆さんにお伝えしたい事があったんです。
 核子の詳細。そして…
 皆さんがGvDと呼ぶ組織の…本体を」
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