事件ファイル No.14-1

終 焉

25 anni dopo25年後.

【Cielo blu in paradiso】

今日も大勢の客に親しまれ、愛されている
隠れ家的な存在のトラットリア。
リストランテの様な料理がもっと気軽に楽しめると
口コミで評判となり
長年常連客の絶えない店として有名だ。
総料理長カポクオーコは28歳の好青年とあって
女性客の評判もなかなかだ。

そんな【Cielo blu in paradiso】に
静かに来店する一人の男性。
慣れた様子で女性給仕人カメリエーラに何かを託ける。
彼女も笑顔で頷くと、
厨房に居るカポクオーコに伝言を述べた。

「瀬戸さんの名前で、明日のディナーの予約…だね。
 判ったよ。4名様で貸し切りにしておく」
「お願いしますね、カポクオーコ」
「あぁ…。しかし、兄妹きょうだいでその呼び方は慣れないな」
「もう何年経ってると思ってるの?
 いい加減に慣れてよね、お兄ちゃん」
「手厳しいな、晋穂あきほは……」
「ほら! 手元に集中して!
 又お母さんに怒られるわよ、和兄かずにい!」

晋穂は笑いながらホールへと戻り
いつもの様に給仕に精を出していた。

母が或る人から受け継いだこの店を
今は自分達兄妹が切り盛りしている。
大切な人達から譲り受けた、大切な場所。
自分の手で、閉める訳にはいかない。
店を継ぐと決意したその時から
和司は己に過剰な重責を与え、
それを乗り越えてきた。

資金繰りに困った事は一度も無い。
海外から定期的に支援が贈られてくる。
【足長オジサン】のお陰だ。

3歳でこの店に住み込んでから
もう25年が過ぎていた。
二階と地下には誰も使わなくなった部屋が
当時のまま、残されている。
時折 母が丁寧に掃除をしている。

何時いつ帰って来ても良い様に』

母はそう言って嬉しそうに笑うのだ。
そんな母の笑顔がとても可愛く見える。

何時いつか……」

和司はふと、そんな言葉を口にした。

* * * * * *

翌日。

本来なら定休日のこの日。
和司は瀬戸の頼みで店を貸し切りにした。

瀬戸との付き合いも長い。
NUMBERINGと云う存在である限り、
表舞台には立てないが
彼はいつも父の片腕として働いている。
その仕事振りは多岐に及ぶ。

今では警視長となった父、阿佐 平助の立場上
子供達も好奇の目に晒されたりもしていた。
身に危険を感じた事も、一度や二度じゃない。
だが、その度に必ず瀬戸が助けてくれた。
彼は和司や晋穂を守り抜く事が喜びだと語る。
そして、彼等を守る事が自分の義務であり
当然の事だと言い切った。

最初は理解出来なかった。
晋穂は未だに理解出来ないと言う。
だが、和司は年齢を重ねる内に
瀬戸の気持ちが理解出来る様になっていた。
彼は父と同じ【心】を持っている。
誰かの為に死力を尽くし、戦う事。
その行為に、誇りを持っている。
だからこそ、彼等に迷いは無い。

「…そう言えば」

和司は何かをふと思い出した。
すると。
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