事件ファイル No.2-4

大臣暗殺計画

数日後、俺は或る人物から呼び出された。

水間 次郎。役職は警視長。
俺の直属の上司である。

「どうだ、首尾は?」
「…申し訳有りませんが、なかなか」
「やはりな。
 あぁ見えて奴等はガードが堅い」
「……」
「だが、懐に潜り込んで奴等の油断を誘えば
 他じゃ手に入らん情報を習得出来る」

水間さんはそう言いながら珈琲を口に含む。
この人からは一切の焦りを感じない。
きっと、何年掛けても粘り続ける気だ。

「又何か有れば連絡を入れます」
「あぁ。期待してる」

水間さんはそう言いながら薄く笑みを浮かべた。
それが何を意味するのか、俺には理解出来なかった。

* * * * * *

同時刻。

同じく珈琲に舌鼓を打ちながら
モニターへ冷笑を浮かべる人物。

「それでこそ水間ちゃんやな」

シーニーである。

彼は阿佐に黙って忍ばせた盗聴器を
水間が感知している事に気付いていた。
互いの手の内を探り合うのは
もう何年になるだろうか。

「狐と狸の化かし合いとは
 よぅ言ったもんやで」

煙草を咥えながらキーボードをカタカタと叩く。
不意に背後から人の気配がした。

「ゲールか?」
= うん。休憩、取る? =

ゲールは珈琲とクッキーを用意して
この部屋へとやって来たのだ。

「気が利くなぁ~。おおきに!」
= ベルデがね =
「えぇ嫁さんになるわ」
= ベルデはロッソのお嫁さんだよ =
「…まぁ、なぁ~」

カタカタとキーボードが音を奏でる。
忙しなく画面に映っては消えていく画像データ。
シーニーは淹れ立ての珈琲を味わいながら
それ等の情報を確認していた。

「野党のあの議員か…」
= 今回の黒幕? =
「あぁ。前、ニュース見た時
 財務大臣に妙な執着を見せとった。
 優男やが、言動が幼稚でな。
 調べてみたら…」
= へぇ~。父親が財務大臣に選挙で負けたんだ =
「初めから勝ち目が無かったとは言われてたけど。
 しかし、それだけの恨みで
 NUMBERINGを所有する迄になるとは呆れるわ」
= テロリスト達はどうやって集めたの? =
「金やろうな。不正な金の流れが其処彼処そこかしこに」
= あらら。下手だね =
「ヘッタクソ過ぎて涙出てくる」

椅子の背凭れを使って伸びをすると
シーニーは新しい煙草に火を点けた。

「掃除やな」

敵勢力を分析しながら
シーニーが静かに言い放つ。

「テロリスト共々、彼奴アイツの勢力を」
= 久しぶりだね =
「あぁ。思いっ切り暴れや、ゲール。
 お前もそろそろ溜まってきたやろ」
= 判る? =
「そりゃ判るわ。
 普段、どんなけ力を抑え込んでるか」
= シーニーが解ってくれてれば
 僕はそれで良いよ =
「お前は相変わらず優しいやっちゃなぁ~」

シーニーに褒められ
照れ臭そうにゲールは笑顔を浮かべていた。
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