事件ファイル No.2-6

大臣暗殺計画

「見学したいならどうぞ。
 生命の保証はせんがな」

シーニーはそう言って冷ややかに笑っていた。
俺がどう云う立場なのかを既に把握している。
その上で、挑発している様だ。

「…それが【任務】だから」
「任務で死んじゃっても意味無いけどなぁ」

ベルデはそう呟き、ロッソやゲールを見た。
二人も彼女に同調する様に頷いている。

「俺達は別にこれ以上死ぬ事ねぇし」
「(うんうん)」
「死ぬ確率が有るのは阿佐だけよ」
「だな。此奴コイツは食らったら間違いなく死ぬ」
「…助けてあげれば良いのよね?」

突然、ベルデがそんな事を言い出す。
シーニーは一瞬だが
苦虫を潰した様な表情を浮かべる。

「ギリギリ迄は見てもらいましょ。
 生きている人にNUMBERINGを見てもらうのも
 これからの計画に於いて必要不可欠だから」

普段の言動からは想像も付かない冷静な大人の発言。
彼女の言葉を、他の3名は黙って聞いている。

「出来るってんなら、阿佐の事はお前等に任せるわ」
「ありがとう、シーニー」
「で、何処どこ所属なんだ? 相手は」
「こ・い・つ!」
「あぁ~。又、此奴コイツか」

溜息を吐くロッソの視線の先には
今話題の野党議員の写真が
画面いっぱいに表示されていた。

「彼がNUMBERINGを…?」
「言ったやろ?
 NUMBERINGはそれ自体が兵器やと。
 だから此奴コイツは、自前の兵器を持っとるって訳」
「世界中の金持ちが普通に所持してるわよ。
 NUMBERINGって表記しないだけでね」
「人の生命を何だと思ってるんだ、彼等は……」

怒気を含んだ俺の呻きに
皆、不思議そうな表情を浮かべていた。

「…何だよ?」
「いや。お前って…善い奴なんだな、阿佐」
「はい?」
「俺達は一応、『死んだ人間』だから」
「今こうして『生きて』るだろうが!
 喋ってるし、動いてるし!」
「だから『善い奴』だって言ったんだよ」

ロッソはそう言うと、
フッと柔らかな笑みを浮かべた。
いつもの強面からは想像も付かない。

「シーニー」
「何や?」
「気が変わった。
 阿佐は俺と組ませろ」
「ロッソ?」
「……」
「守り抜いてやるよ、お目付け役さん」
「ロッソ……」
「…勝手にせぇ」
「あぁ、勝手にやらせてもらおう」
「安心して、ロッソ。阿佐。
 私とゲールも、直ぐに駆け付けるから。ね!」
「(勿論!)」

シーニー以外の面々が
それぞれに笑顔で声を掛け合う。
照れ臭くなり、不意に視線を外すと
誰にも見られない様になのか
シーニー迄もが口元に笑みを浮かべていた。
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