俺は咄嗟に判断が付かなかった。
ロッソは目の前の大男の胸板を
蹴りだけで突き破っていた。
敵はまだ3体存在するが
今のロッソを相手にするのは
自殺行為にしか思えなかった。
それでも、彼等は退けないのだろう。
ロッソを倒さない限り、彼等の未来は無い。
そして、それを誰よりも理解しているのが…。
「終わらせてやる。
その【間違った運命】をな!」
ロッソの右膝部分から白煙が立ち込めている。
彼の四肢は義手義足だ。
もしや、不具合が発生したのか?
「慌てんなって」
他でもない、ロッソ自身から声を掛けられた。
「気合入れてんだよ」
「それじゃ…」
「何も問題無ぇ。心配すんな!」
ロッソの戦いはその言葉通り
全く危なげの無いものだった。
「……」
上に報告しなければならないのは解っている。
しかし、彼等の事を報告書に纏める事を
俺は何処かで拒絶している自分に…。
この時。
気が付いた。
「Checkmate」
その声は、画面の向こう側に居る相手に
伝わったのだろうか。
文字だけ。映像も音声も無い空間。
シーニーは小さくそう呟き、ENTERボタンを叩いた。
一瞬で、彼の持つ情報が世界に向けて一斉配信された。
情報からシーニーの居場所を辿る事は出来ない。
彼はFOOLではない。
「さぁ~て、全ての口を封じられるんか?
世界中の人間の口を。
まぁ~、無理やろうなぁ~」
一方その頃。
街に備え付けられている防犯カメラを利用し
ロッソの戦いを見ている人物がいた。
水間である。
「久し振りだな。この状態で戦っているのは」
相手がNUMBERINGだからこそ
彼はこの状態で戦っているのだろう。
【解除】
ランクSSSの【Memento Mori】だけが持つ、特殊な戦闘能力。
「それにしても、【格下相手】に容赦無い。
これはアピールだと捉えても良いな。
さて、誰に対してだ?」
直後、彼のスマートフォンがアラートを鳴らす。
何かの情報をキャッチしたのだ。
静かに画面を一瞥すると
水間は鼻で小さく笑った。
「成程。【奴】を潰す為のアピールかい。
随分と丁寧な対応ですなぁ~」
水間はそう言うと、スマートフォンを操作した。
何処かへ連絡を入れる様だ。
「もしもし…。水間です。
はい、動きました。はい……」
二言三言会話を交わすと
水間はスマートフォンの通話を切った。
「さて、阿佐は
水間の視線は再び、ロッソの戦闘映像へと向いた。