事件ファイル No.2-8

大臣暗殺計画

目の前の戦いが現実のものなのか
俺は咄嗟に判断が付かなかった。

ロッソは目の前の大男の胸板を
蹴りだけで突き破っていた。
敵はまだ3体存在するが
今のロッソを相手にするのは
自殺行為にしか思えなかった。

それでも、彼等は退けないのだろう。
ロッソを倒さない限り、彼等の未来は無い。
そして、それを誰よりも理解しているのが…。

「終わらせてやる。
 その【間違った運命】をな!」

ロッソの右膝部分から白煙が立ち込めている。
彼の四肢は義手義足だ。
もしや、不具合が発生したのか?

「慌てんなって」

他でもない、ロッソ自身から声を掛けられた。

「気合入れてんだよ」
「それじゃ…」
「何も問題無ぇ。心配すんな!」

ロッソの戦いはその言葉通り
全く危なげの無いものだった。

「……」

上に報告しなければならないのは解っている。
しかし、彼等の事を報告書に纏める事を
俺は何処かで拒絶している自分に…。

この時。
気が付いた。

* * * * * *

Checkmateチェックメイト

その声は、画面の向こう側に居る相手に
伝わったのだろうか。
文字だけ。映像も音声も無い空間。
シーニーは小さくそう呟き、ENTERボタンを叩いた。

一瞬で、彼の持つ情報が世界に向けて一斉配信された。
情報からシーニーの居場所を辿る事は出来ない。
彼はFOOL愚か者ではない。

「さぁ~て、全ての口を封じられるんか?
 世界中の人間の口を。
 まぁ~、無理やろうなぁ~」

* * * * * *

一方その頃。

街に備え付けられている防犯カメラを利用し
ロッソの戦いを見ている人物がいた。
水間である。

「久し振りだな。この状態で戦っているのは」

相手がNUMBERINGだからこそ
彼はこの状態で戦っているのだろう。
解除Exceed the Limit
ランクSSSの【Memento Mori】だけが持つ、特殊な戦闘能力。

「それにしても、【格下相手】に容赦無い。
 これはアピールだと捉えても良いな。
 さて、誰に対してだ?」

直後、彼のスマートフォンがアラートを鳴らす。
何かの情報をキャッチしたのだ。
静かに画面を一瞥すると
水間は鼻で小さく笑った。

「成程。【奴】を潰す為のアピールかい。
 随分と丁寧な対応ですなぁ~」

水間はそう言うと、スマートフォンを操作した。
何処かへ連絡を入れる様だ。

「もしもし…。水間です。
 はい、動きました。はい……」

二言三言会話を交わすと
水間はスマートフォンの通話を切った。

「さて、阿佐は何処どこ迄情報を掴んだ?」

水間の視線は再び、ロッソの戦闘映像へと向いた。
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