事件ファイル No.2-9

大臣暗殺計画

粉々に砕かれた肉塊を静かに見下ろすロッソ。
ピクリとも動かないその姿に
俺は何とも言えない不安を感じ取った。
殺人許可証を所持しているとはいえ
同じ立場であるNUMBERINGと
殺し合わなければならない存在。
【Memento Mori】達が自らに課した、
余りにも重い責務。

「阿佐」

ロッソは、落ち込む俺に声を掛けて来た。
いつもと変わらない、自信漲る声量。

「帰るぜ」
「あ。あぁ…」
「腹減らねぇか?」
「いや、俺は…」
「食欲湧かんか。まぁ、そうだよな。
 俺は逆で、この格好で暴れると矢鱈腹が減る」
「ロッソだけ?」
「いや、全員」
「そうなんだ…」
「決まって、仕事の後は焼肉になるんだけどさ」

この状況でも肉が食いたくなるのか。
そうでもないと戦えない。
改めて、彼等の壮絶な生き様に声を失う。

「さぁ、行くか」
「あぁ」

促されるまま、俺はロッソと帰路に就いた。

* * * * * *

= シーニー、聞こえる? =
「あぁ、何や?」
= 又 見られてた =
「又? 機種は判るか?」
= カメラの? 流石に音だけでは… =
「そうやな。然も戦いながらとなると」
= シーニーは誰だと思う? =
「まぁ、十中八九 水間やろうな」
= 私もそう思う =

= こっちも終わったよ =
「あぁ。ご苦労さん、ゲール」
= 僕も感じた =
「【視線】をか?」
= うん =
= 同時に三人の戦いを見てたのかしら? =
「防犯カメラの映像なら可能やな」
= もしかして、水間さん? =
= そうじゃないかな?って話をしてたの。
 相変わらずHなオジさんだよね、水間って! =
「水間の件は気にすんな。
 今に始まった事じゃあらへんし」
= それもそうか =
= うんうん =
「こっちの仕事も一段落や。
 手駒を失って、自分の足場もボロボロになった政治家が
 果たして持ち直して表世界に出て来れるかね?」
= 無理でしょ =
= 僕もそう思う =
「明日のニュースが楽しみやな。
 腹減ったろ。【跳ばし】たろうか?」
= 大丈夫よ。ゲールと合流して帰るから =
= そうする~! =
「そうか。じゃ、気を付けてな」

精神感応テレパシーでの通信を終え
シーニーは煙草を口にすると笑みを浮かべた。

「二人共優しいなぁ~。
 まぁ、俺だけ今回は肉体労働してへんし
 少し位は手伝ったろうと思っただけやけど」

暫く煙草を吹かし、物思いに耽る。
今回の事件も、問題無く終了した。
だが、まだまだこんな物じゃない。
自分達が狙うべき敵は。

「暫くは様子見やな。水間の件も含めて」

シーニーはそう言うと、ゆっくり立ち上がり
静かに自室を後にした。
腹を空かせて帰って来る仲間達の為に
食事を用意するつもりなのだ。

「阿佐には…サラダでも用意しとくか。
 流石に彼奴アイツは焼肉キッツいやろうし」
Home INDEX ←Back Next→