事件ファイル No.3-12

男児誘拐監禁事件

【Cielo blu in paradiso】に避難した阿佐達は
モニターでロッソとベルデの戦いを見守っていた。
核子との勝負は一瞬で着いたが
屋敷の崩壊が同時に発生している事に気付き
阿佐は慌ててシーニーに詰め寄った。

「シーニー!
 もう一度瞬間移動テレポーテーション出来ないか?!
 あのままじゃ二人がっ!!」
「気楽に言ってくれるな。
 こっちも結構、精神力消耗するんやで?」
「それは充分解ってる! でもっ!!」

焦る阿佐の肩をゲールが笑顔でトントンっと軽く叩く。

「え? 何、ゲール?」

まるで『見て』と言わんばかりの彼の笑みに
阿佐は恐る恐るモニターを見つめた。
確りと手を繋ぎ、空を飛んでいる二人の姿。
微笑み合う二人の表情は穏やかで
先程迄の激戦が嘘の様にすら思えた。

「ほらな。心配要らんやろ?」
「……」
「だからベルデが態々『残った』んよ」
「…本来は彼女が【担い手】で
 あったんですよね?」

真神教授の一言にシーニーが途端に表情を硬くした。
暫く無言のままで彼女を見つめていたが。

「何処迄、情報を掴んでおいでで?」
「生物学の観点からのアプローチのみです」
「成程。【奴等】も相当口が堅いと見た」

そう言って、シーニーは表情を和らげた。

「失礼致しました。
 此方としても死活問題なんでね」
「私の方こそ、不躾で申し訳有りませんでした…。
 助けて頂いた身でありながら……」

そう言って真神教授は深々とお辞儀をした。

* * * * * *

「じゃあな、勇人。
 また母ちゃんと一緒に遊びにおいで」
「うん! 必ず今度はお母さんと一緒に来るね!
 またお兄ちゃんのお料理食べたい!」
「おぅ! 腕を揮うからな。
 楽しみにしてろよ!」
「うん!!」
「良かったね、勇人君。
 お母さんの事、ちゃんと守ってあげてね」
「勿論だよ、お姉ちゃん! 約束する!」

シーニーは阿佐経由で水間を動かし
真神親子の心身の安全を確保した。
正直、彼としては
水間に借りを作りたくは無かったが
今回ばかりは仕方が無いとぼやいている。

「(そう云うシーニーの優しい所、大好き!)」
「おおきに、ゲール…」
「そんなに水間さんの事、苦手なんだ」
「まぁな。腐れ縁っつーやっちゃ」
「水間さん、何も教えてくれないから…」
「そりゃそうやろうな。彼奴アイツの立場からしても」
「……へぇ」

阿佐は感心しながらシーニー見るが
彼はそのまま自室へと向かって行った。
あまり乗り気ではない。
それだけは、
無言の背中を見送るだけで伝わって来た。
Home INDEX ←Back Next→