事件ファイル No.3-7

男児誘拐監禁事件

「…ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん!」

声が聞こえる。
目をゆっくり開けてみる。
随分と視界がボンヤリとしている。

「お兄ちゃん…」

記憶が少しずつ蘇ってくる。
そうだ。此処は…。

「勇…人……」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「俺…は、平気…だ。お前…は?」
「大丈夫…。平気」

時折聞こえてくる、鼻をすする音。
勇人が泣いているのだと判る。

「勇人…」
「…何?」
「絶対に、母ちゃんに会わせてやる」
「お兄ちゃん…?」
「安心しろ。約束したからな。
 絶対に、母ちゃんを助けるんだ」

胸元がヤケに涼しいと思ったら
ライダースーツが派手に破れていた。
悪趣味な野郎が居たもんだ。
俺を半裸にしてどうしたいのやら。

さて…。
そろそろ反撃開始といこうか。

「もうすぐ合流出来そうだな」
「えっ?」
「勇人。少し俺から離れてろよ」
「? う、うん…」

勇人の安全を確認してから
俺は吊り上げられた状態の両手首に
意識を集中させた。

「くぅ…っ、はぁぁーーーっ!!」

気合を入れ、鎖を掴むと
それを一気に引き千切った。
天井の壁が衝撃でヒビ割れを起こす。
様子を黙って見ていた勇人は
流石に驚いたらしく
唖然とした表情を浮かべていた。

「ふぅ~。スッキリした!」
「お、お兄ちゃん…?」
「あぁ、驚かせちまったな。
 俺、馬鹿力なんだよ」
「へぇ~。凄いね! 鍛えてるの?」
「鍛えてる。
 喧嘩に負けない様に、毎日」
「そうなんだ…」
「好きな女位は
 自分の力で守りたいからさ」
「それって、ベルデお姉ちゃんの事?」
「…あぁ。まぁ、そうだな」

柄にもなく子供相手に青臭い事を言って
更に照れてしまった。
勇人は安心したのだろう。
漸く泣き止み、笑顔を浮かべていた。
俺は勇人の髪を優しく撫でながら
そっと声を掛けた。

「さぁ、次は此処から出るぞ」
「うん!」
「此処を出たら、俺が『良い』と言う迄
 目を閉じてるんだ。解ったな?」
「…うん。解った!」
「良い子だ。あと少しの辛抱だから」

此処から先の戦場を
出来ればこの子には見せたくない。
戦士としての矜持プライド

「本当に悪趣味だよな。
 地下牢に、鉄格子ときたか…」

俺は鉄格子を力任せにこじ開けると
勇人を左腕で抱き上げ、
そのまま上階へと目指して駆け出した。

途中、何度か敵兵であるアンドロイド
通称【人形ひとがた】と遭遇したが
全て完膚なきまでに破壊した。

『どうやら此処にはNUMBERINGよりも人形ひとがたの方が
 多く配置されているみたいだな』

対NUMBERINGとは別の戦い方を強いられる。
俺は気を引き締め、前進を続けた。
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