事件ファイル No.3-8

男児誘拐監禁事件

シーニーはすました顔をしながら
画面の一点を見つめていた。

「シーニー…」
「心配は要らんで、ベルデ。
 やはり救助に現れる正義の味方の登場は
 パァーっと派手にした方がぇよな」
「?」

俺は意味が解らず、首を傾げた。
そんな俺の肩を
ゲールがニコニコしながら軽く叩く。

「阿佐。よぅ似合っとるやん」

対NUMBERING戦に備え
俺にも彼等と同様の戦闘服が支給された。
作ってくれたのはベルデらしい。
彼等の戦闘服よりも防弾能力が高いのは
誰のアイディアなんだろうか。

「さて、此処から一気に
 敵の本拠地へ送り込むで。
 ロッソが拠点の映像データを送ってくれたから
 ポイントの絞り込みが容易で助かった」
「ロッソが? どうやって…」
「俺等は精神感応テレパシーで情報交換が出来るんでな」

自信満々に笑みを浮かべるシーニーは
普段見せない子供の様な無邪気さがあった。

「敵陣のど真ん中に放り込むからな。
 巧く捌いてくれよ」
「ゲール。阿佐の事、お願いね。
 私は真っ直ぐに最上階を目指す。
 ロッソの情報では、
 其処に勇人君のお母さんが居る」
「(解ったよ、ベルデ。気を付けてね)」
「ベルデ……」
「私達は勇人君と彼のお母さんを救い出す。
 そして……」

彼女はそう言って、一瞬険しい表情を浮かべた。
15歳の少女とは思えない、大人びた表情。

「核子を、消さなければ…」
「核子……」

一体どんな存在なんだろう?
ついこの間まで、
俺はNUMBERINGの事も知らなかった。
知らされもしていなかった。
恐らく、核子もその類だろう。

それを見極めるのも…
恐らくは、俺の【使命】なんだ。

「準備は良ぇな? 跳ばすで!」

シーニーの声が徐々に遠くなっていく。
それと共に、周囲の景色もぼやけていった。

瞬間移動テレポーテーション

自分がこうやって経験するのは
勿論、初めての事だ。

* * * * * *

シーニーが送り込んだのは
敵の本拠地である建物の一階。
大広場には敵が集まっている筈。
それなりに覚悟を決めていたのだが
到着後の有様を見て
俺は思わず息を飲んだ。

敵は既に殲滅されていたのだ。
もげた手足から金属の部品が見えている。
これは、人間では…ない?

「来たか…」

其処に居たのは
ボロボロの状態で勇人君を抱きかかえたまま
周囲を睨み付けていたロッソだった。

「よし、勇人。もう良いぞ」

それ迄、固く両眼を閉じていた勇人君だったが
ロッソの声に従う様に、恐る恐る目を開けた。
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