不用意にそれを口にした研究員の自業自得だ。
的場 志穂は死後、犯人に穢されている。
所謂【死姦】と云うやつや。
俺にそんな趣味無いが、
中にはそう云う変質者も居る。
そして、これは検証し直した末に知った事やけど
ロッソ、いや…【鷹矢 晋司】は
死後の彼女の様子を知っていた。
現場検証の中を突っ切って
彼女と家族の最期をその目にしとったらしい。
当然、彼女が死姦された事も知っとる。
恐らくは…見れば判るからな。
当時高校1年生だった鷹矢にとって
全ての価値観が狂ってもおかしくない位
衝撃的な現場だったに違いない。
志穂の事件の再検証から
事件後の鷹矢の行動も伺える様になった。
異常な迄に事件を追い、犯人の行方を追った男。
残念ながら未だに聞く事が叶わん。
自分の人生を棒に振ってでも、叶えたかった復讐。
鷹矢を其処迄突っ走らせた原因、理由は何か。
そして、自身の死を超えた先でさえも
彼女の死姦を口にした研究員を
惨殺した時に見せた冷ややかな笑みは
凡そ、
「【Heuschrecke型 SSS Kreuz】の処分についてですが」
議題が上がった時、我ながら拙いなとは思った。
Heuschrecke型 SSS Kreuz。通称【H-S-K】。
つまり、ロッソの事や。
研究所の上層部としては
危険分子であるロッソを解体処分にすると言い出したのだ。
自分達で作り出したのだから
自分達で処分出来ると踏んだんやろう。
万能者たる【神】にでもなったつもりか。
おぞましい奴等やで、ほんまに。
「ランクSSSは全て【G-Cell】との
融合が完了しとるんですがね。
処分出来るとホンマにお思いですか?」
「……」
「同じSSSでも、H-S-Kは最も攻撃力が高い。
俺とH-S-Dで挑んでも
相打ちに持って行けるかどうか」
【Hirschkäfer型 SSS Diamant】。
通称【H-S-D】。こっちはゲールの生体認識番号。
因みに俺は【Schnecke型 SSS Pik】。
通称は【S-S-P】になる。
「【Gottesanbeterin型 SSS Cuori】はどうです?」
やっぱり言ってきおったか。
確かにロッソが最も苦手とする相手やろうな。
Gottesanbeterin型 SSS Cuori。通称【G-S-C】。
…ベルデの事や。
惚れた女の手でロッソに死ねってか。
奴等、血も涙も無いのぅ。
「G-S-Cはその性質上、戦闘には向いてまへん。
その辺は其方の方が良く御存知でしょ?」
「確かに…。しかし……」
「要はH-S-Kの破壊衝動さえ
抑える事が出来れば良いんでしょうが。
ならばお目付け役にG-S-Cを宛がえば良ぇ」
「成程」
「但し、G-S-Cの情報の管理は
今迄以上に、より厳重にお願いします。
今回みたいな事にならん様にね」
此方としてもロッソの戦闘力は重要な切り札や。
みすみす捨て去る様なヘマはせん。
この攻防戦で俺が勝利した事は
未来への扉が一段階開いた事に繋がった。
態々口には出さんけど
少し位は皆、俺に感謝して欲しいわ。