事件ファイル No.4-12

的場一家 惨殺事件・前編

正直、【アレ】はロッソに非が無いと今でも思っとる。
不用意にそれを口にした研究員の自業自得だ。

的場 志穂は死後、犯人に穢されている。
所謂【死姦】と云うやつや。
俺にそんな趣味無いが、
中にはそう云う変質者もる。

そして、これは検証し直した末に知った事やけど
ロッソ、いや…【鷹矢たかや 晋司しんじ】は
死後の彼女の様子を知っていた。
現場検証の中を突っ切って
彼女と家族の最期をその目にしとったらしい。
当然、彼女が死姦された事も知っとる。
恐らくは…見れば判るからな。

当時高校1年生だった鷹矢にとって
全ての価値観が狂ってもおかしくない位
衝撃的な現場だったに違いない。

志穂の事件の再検証から
事件後の鷹矢の行動も伺える様になった。
異常な迄に事件を追い、犯人の行方を追った男。
彼奴アイツ其処そこ迄執着した理由は
残念ながら未だに聞く事が叶わん。

自分の人生を棒に振ってでも、叶えたかった復讐。
鷹矢を其処そこ迄突っ走らせた原因、理由は何か。
そして、自身の死を超えた先でさえも
彼奴アイツアイツは まだ事件の影を追っている様に思う。
彼女の死姦を口にした研究員を
惨殺した時に見せた冷ややかな笑みは
凡そ、彼奴アイツアイツらしくないと感じた。

* * * * * *

「【Heuschreckeホイシュレッケ型 SSSトリプルエス Kreuzクロイツ】の処分についてですが」

議題が上がった時、我ながら拙いなとは思った。
Heuschreckeホイシュレッケ型 SSSトリプルエス Kreuzクロイツ。通称【H-S-K】。
つまり、ロッソの事や。
研究所の上層部としては
危険分子であるロッソを解体処分にすると言い出したのだ。
自分達で作り出したのだから
自分達で処分出来ると踏んだんやろう。

万能者たる【神】にでもなったつもりか。
おぞましい奴等やで、ほんまに。

「ランクSSSは全て【G-Cellジーセル】との
 融合が完了しとるんですがね。
 処分出来るとホンマにお思いですか?」
「……」
「同じSSSでも、H-S-Kは最も攻撃力が高い。
 俺とH-S-Dで挑んでも
 相打ちに持って行けるかどうか」

Hirschkäferヒルシュケーファ型 SSSトリプルエス Diamantディアマントゥ】。
通称【H-S-D】。こっちはゲールの生体認識番号。
因みに俺は【Schneckeシュネッケ型 SSSトリプルエス Pikピーク】。
通称は【S-S-P】になる。

「【Gottesanbeterinゴッテスアンベーテリン型 SSSトリプルエス Cuoriクオーリ】はどうです?」

やっぱり言ってきおったか。
確かにロッソが最も苦手とする相手やろうな。
Gottesanbeterinゴッテスアンベーテリン型 SSSトリプルエス Cuoriクオーリ。通称【G-S-C】。
…ベルデの事や。
惚れた女の手でロッソに死ねってか。
奴等、血も涙も無いのぅ。

「G-S-Cはその性質上、戦闘には向いてまへん。
 その辺は其方の方が良く御存知でしょ?」
「確かに…。しかし……」
「要はH-S-Kの破壊衝動さえ
 抑える事が出来れば良いんでしょうが。
 ならばお目付け役にG-S-Cを宛がえば良ぇ」
「成程」
「但し、G-S-Cの情報の管理は
 今迄以上に、より厳重にお願いします。
 今回みたいな事にならん様にね」

此方としてもロッソの戦闘力は重要な切り札や。
みすみす捨て去る様なヘマはせん。
この攻防戦で俺が勝利した事は
未来への扉が一段階開いた事に繋がった。

態々口には出さんけど
少し位は皆、俺に感謝して欲しいわ。
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