商店街の側に位置する小さな公園。
ベルデとゲールはブランコに乗りながら
静かに会話をしていた。
「時々思うんだけどね」
= うん =
「ロッソ…。何も言わないんだよね。
きっと迷惑掛けてると思うんだけど」
= 迷惑を? ベルデが? =
「うん」
= そんな事無いよ =
「そうかな?
この間だって、私が急に起き出して…。
大声で悲鳴上げて飛び起きるから
きっと吃驚しちゃうと思うし……」
= ロッソは迷惑って言ってる? =
「ううん、全然。だから却って……」
= ロッソが言ってないんだったら大丈夫。
ロッソは迷惑だなんて思ってない =
「…そうかな?」
= 男ってそう云う所有るよ。
言わない時は、そうじゃない時 =
「ゲールも?」
= うん。僕も、シーニーも =
「シーニーは…あまり参考にならないかも」
= 元々自分の事は殆ど話さないからね、シーニー。
でもね、もしロッソが迷惑だって思ったら
直ぐに迷惑だって言ってくれるよ。
ロッソはそう言う人 =
「そっか…。そうだよね」
= だから。迷惑って言われる迄は
甘えて良いと思うよ、僕は =
「うん…。ありがとう、ゲール」
沈んでいたベルデの表情が
少しだけ柔らかく、明るくなっていた。
ゲールも静かに微笑んでいる。
= 何だか、お腹が減ってきたね =
「そう言えば…そうね。
買い物も終わったし、帰る?」
= うん。…あっ、阿佐だ! =
「え? あ、本当」
ゲールは此方に向かって来た阿佐を見付けると
大きく手を振ってアピールを始めた。
彼もゲールに気が付いたのか
笑顔を浮かべ、駆け寄って来る。
「阿佐」
「迎えに来たよ、二人共!」
「丁度良かった。
お腹が空いたねって話をしてたの」
= うんうん =
「あ~。そろそろ大丈夫かな?」
「? どうかしたの?」
「いや、ロッソがやけにご機嫌斜めでさ」
「……やっぱり、私の所為で」
= 違うよ、ベルデ。
ベルデの所為なんかじゃないよ =
「それは違うって。
ほら、腹の虫の居所が悪かっただけ。
寧ろ…俺が君の名前出したら
ヤキモチ焼いて不機嫌に輪をかけてさ」
「…え?」
「きっと今頃、寂しがってると思うから。
帰ったら甘えてみると良いよ、ロッソに」
「……」
ベルデは心配そうにゲールを見るが
彼も阿佐の言葉に同意を示している。
「…じゃあ、そうしてみる」
「頼むよ。ベルデが居てくれないと困るから」
『ロッソらしいや』
「本当にそう思うよ」
ゲールの心の声は阿佐に聞こえていない筈。
それなのに、彼はゲールの今の言葉に
反応する様な事を呟いた。