22時半を過ぎた頃だった。
かれこれ半日近くベルデは行方不明のまま。
「雪も積もってきてるし、流石に心配だよ…」
「ベルデちゃん……」
チラッと時計を見たロッソが
厨房から大きな袋を出して来た。
綺麗にラッピングされたそれを丁寧に開けると
鮮やかな緑色のコートが姿を見せた。
「ロッソ…それって…?」
「これ? クリスマスプレゼント」
「ベルデに?」
「あぁ。枕元にこれを置いてやるつもりだったがな」
「晋……」
「良い子にはサンタクロースがプレゼントをくれるんだ。
そろそろ彼女にもそんな楽しみがあっても良いだろ」
聖夜に殺されてしまったベルデにとって
この2日間は只でさえ憂鬱で苦しいだけだった。
NUMBERINGの一人として彼女が蘇った日は12月25日。
奇しくもクリスマス当日。
そしてそれはシーニーもゲールも同様だった。
ロッソも又、聖夜に殺されてしまった一人。
長く収容されていた研究所から
外の世界へと出て来た日も12月25日。
彼等にとっては因縁の2日間。
「【Memento Mori】の誕生日、だな」
= そうだね。盛大にお祝いしないと =
「その為には、ベルデをとっ捕まえてこんとな」
「彼女に関しては俺に任せてくれ。
時間にして、そろそろだ」
「えっ? 当てが有るのか、ロッソ?」
「あぁ。彼女が【的場 志穂】であれば間違いなく、な」
相当自信が有るのだろう。
ロッソの笑みには力強さが漲っている。
「晋」
「何だ、妙子?」
「迎えに行ってあげてね、【志穂ちゃん】を」
「…勿論だ」
「私は此処で待ってる。和司と一緒に」
自身の膝で眠る愛しい息子に微笑みながら
妙子はそう言ってロッソを送り出す。
嘗ての婚約者としてではない。
古くから付き合いのある幼馴染として。
そして、性別を超えた親友として。
「行ってくる」
「「行ってらっしゃい」」
ロッソが羽織る真っ赤なコート。
それはベルデにと用意した物と色違い。
静かに降り積もる夜の街に
その姿がゆっくりと溶け合う様に消えて行った。
「さぁ~て、と」
シーニーが突然伸びを始めた。
「どうしたんだ、シーニー?」
「今晩中には帰って来んと思うから
明日に備えてパーティーの飾り付けでもしよか?」
「今から? 流石に五月蠅くない?
和司君、寝ちゃってるよ?」
「音立てる様な準備するかいな、こんな深夜に」
「それはそうなんだろうけど……」
「折角のお祭りの日なんやで?
盛り上がらんと面白ないやん」
「(賛成!)」
「私も、出来る範囲でお手伝いします」
ゲールと妙子が笑顔で賛同する。
やれやれと言いながら
阿佐も悪い気はしなかった。