同時刻。
シーニーの自室。
ホールをベルデと妙子に貸し出し、
ロッソはゲールと共にシーニーの部屋に居た。
「逆切れ婚かいな」
呆れた声でシーニーが話し掛けると
ロッソは苦笑を浮かべていた。
「流石にあれじゃ幾ら何でも妙子が可哀想やわ」
「まぁな。自分でも、あれは無いと思う。
ちゃんと断るべきだった」
= 妙子さんの事、好きだったの? =
ゲールのストレートな問い掛けに
ロッソは思わず手にした煙草を落とし掛けた。
= ロッソ? =
「察したり、ゲール。
此奴はな。好きな女以外を側に置いたりせん」
= 良かった! 安心したよ =
「シーニー…。テメェ……」
「事実やろうが。照れんなや」
「……惚れた女は一人だけだ」
「それも解っとる。だからお前は死ぬ迄苦しんだ。
この一連の出来事を
的場一家への【裏切り行為】と捉えたからな」
「……」
「お前はあの時、自身の幸せを放棄する生き方を選んだ。
最期迄、復讐に全てを費やそうとした。
しかし、妙子との結婚はそれ等の誓いを無にする行為や。
だから苦しんだ。自分を責め続けた」
「…俺は」
「一途過ぎんねん。お前って奴は」
だからこそ、真相を知ったベルデが心配だと
シーニーは神妙な面持ちで口にした。
「彼女の所為じゃない。
俺の死は、俺の責任だ」
「勿論そうや。お前だけやない。
少なくとも、俺はお前と同じ状況やからな」
= 僕は? =
「ゲールは…う~ん。ややこしいな。
お前は殆どトバッチリに近い訳やし」
= そっか。自分の死の背景って
誰かに聞かないと判らないよね =
「そりゃな。自分の死後の話なんやし」
話が盛り上がるシーニーとゲールを横目に
ロッソは一人、何かを思案していた。
勿論 ベルデがこれ以上
鷹矢の事情を聞き出さない様にするには
どうすれば良いのか、をだ。
無駄だと判っていながらも
彼女を傷付けたく無いからこそ。
勿論、以前シーニーが話した通り
無理に押さえ付ければそれ相応に反発される。
無理矢理だけは絶対に避けなければならない。
「要はお前の【死】に触れんかったらえぇねん」
「まぁ…そう云う事だ」
「ベルデが聞きたがっとるのは
幸いにも『生前の鷹矢の様子』やろうし。
…妙子かって、態々お前の死を
語りたいとも思えんしなぁ」
「それに期待するしかねぇか……」
ロッソは煙草を静かに吸いながら
或る事にふと気が付いた。
「そういや、阿佐は?」
「お出掛け」
「例の定期報告?」
「そう。水間ちゃんとのデート」
「気持ち悪い事言うな」
「まぁまぁ」
= でも、最近の阿佐は楽しくなさそうだよ? =
「そうなん?」
= うん。『気が重い』って言ってた =
「へぇ~」
反応の薄いシーニーに対し
ゲールはロッソと顔を見合わせた。