事件ファイル No.6-10

鷹矢 晋司 暴行殺人事件・後編

同時刻。

『どう落とし前を付けるつもりだ?』

電話口で男の怒号。
純一はスマホから耳を離してどこ吹く風だ。

「だから、NUMBERINGを貸して欲しいのよ。
 俺の手持ちじゃ心許無くってさ」
『……』

電話の相手は自分の父親だ。
暫く奥で何かを話した後、咳払いを一つした。

人形ひとがたとNUMBERINGを10体。
 それでケリを付けろと』
祖父じいちゃんが? そりゃ助かる!」
『失敗は許されんぞ』
「俺に失敗なんて無いって!」

通話を終了し、純一はほくそ笑んだ。

祖父じいちゃんのNUMBERINGに勝てる奴なんて
 この世に存在しないんだよ。
 こっちから襲撃を掛けて潰してやる」

* * * * * *

「動き有ったな」

渡邊親子の通信をキャッチしたシーニーが
ニヤリと笑みを浮かべた。
万が一に備え、作戦会議室をホールに設置し
彼等はその時を迎えていた。

「飛んで火にいる夏の虫」
「(何て言って来たの?)」
「純一はやはり祖父に強請ねだって
 NUMBERINGを借り出したわ。
 10体と言ってたから
 恐らく最初に出すのはランクBや」
「あれ? ランクB’は?」
「必ず出してくるさ。
 きっと、孫の一大事に備えてな」
「じゃあ……」
「言わしてもらうけど」

シーニーは少し不機嫌そうに声を荒げる。

「俺もランクSSSなんやけどな」
「…見えない」
「そりゃ悪ぅ御座いましたな!」
「ご、御免 シーニー!
 俺はてっきり、シーニーの頭脳が
 ランクSSSなんだとばかり思ってたから…」
「それも当たっとる!!」
「怒る事じゃないじゃん」

そう言って笑うベルデに全員が釣られて笑い出した。

「例え純一がランクB’を出して来ても
 私とシーニーが居る以上、絶対に勝てないわ」
「ランクSSSが二人では…そりゃそうか」
「番狂わせも発生させんからな」
「そもそも純一はロッソのランクを
 どれ位に見積もってるんだろ?
 ランクBをそれなりに揃えれば勝てるって事だろ?」
「高く見積もってたとして同ランク…やろうな」
「やっぱり?」
「俺等は正式にランクインしてへんから。
 データを見るだけやと絶対に正確なランクは判らん」
「そのランク外をランクC以下と見立ててる可能性も…」
「有るだろうな」

ロッソは鼻でフッと笑うと口角を上げた。

「渡邊の御老体がどう動くか次第だが」
「そうやな。あのジジイは要注意や。
 最悪、孫息子 切り捨てるかも知れん」
「えっ?」
「そう云う男やねん、彼奴アイツは」

驚く阿佐に対し、シーニーは涼しい顔をして言い切った。
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