地下室に集まった俺とゲールに対し
シーニーは静かにそう言った。
「裏?」
「渡邊程の階級になると
組織の事もそれなりに知っとる筈や。
掴んでおきたい情報は山の様に有る」
「成程な」
「純一がそれを知らんでも
その親父、若しくは御隠居に
俺等の存在をアピール出来れば…
次の機会に聞き出す事も出来るやろう」
= だけど組織がそれ迄に彼等を生かしておくかな? =
「分からん。消される可能性は大や」
「純一が何かを知っていて
それをゲロってくれりゃ一番速い」
「まぁな。今はそれに賭けるわ」
シーニーはそう言って、奥の棚から何かを取り出した。
「久しぶりだな、それ使うの」
「結構気に入ってんねん。
マメに手入れはしてるからな。
使用には何も問題あらへん」
シーニーが手にしているのは
MGC製のレミントンM870 ブリーチャーショットガン。
数有る重火器の中でお気に入りの逸品だと言う。
「お前は解除でいくのか?」
「俺とベルデは解除不要やろ。
相手は只のボンクラや。
NUMBERINGでも人形でもあらへん」
「まぁ、確かにな」
= でも、油断しないでよ。
背後にNUMBERINGを隠し持ってるかも =
「そうやな。油断は禁物や」
俺はふと、或る事が気になった。
先程ゲールが話していた
『NUMBERINGを隠し持つ』と云う行為。
それが最も効果を発揮する場面は…。
「ゲール」
= 何? =
「お前、阿佐と組んで戦えそうか?」
= 側に妙子さんと和司君も居るよ?
離れて戦った方が良くない? =
「…そうか。阿佐が狙われる可能性……」
「そう云う事だ。
俺が奴なら、必ず阿佐を襲撃する。
その方が確実に
【Memento Mori】の動きを止められる」
「交渉次第であわよくば自軍に引き込める…か。
冴え取るな、ロッソ。
流石は【お父さん】や!」
「冷やかすな。マジだぞ、俺は」
「いやいや、ホンマに褒めとるんよ。
流石の俺も盲点やった。
と、云う事は…鍵はゲールの動きやな」
= 僕が? =
「臨機応変に対応してもらう事になりそうや。
最初は作戦通り、人形の動きを止めよ。
先鋒は一番動きの速い人形やろうからな」
= その後に阿佐と合流すれば良いんだね。
解ったよ! =
「一寸重労働になるけど、済まんやでゲール」
= 任せて! 遠慮無くぶっ壊す! =
「その意気や」
= でもその場合。ロッソが大変だよね =
「俺か? …まぁな。だが」
= ? =
「渡邊への恨みを全部其処にぶつけてやるさ」
俺に恐怖心や不安は一切無かった。
この戦いで全て清算してやる。
遺恨は、未来に残さない。
それが…和司の父親として俺が出来る
せめてもの【償い】だからだ。