事件ファイル No.6-11

鷹矢 晋司 暴行殺人事件・後編

深夜。

妙子達が住むマンションの側、住宅街の外れ。
予測通り、最初に激突したのは
ゲールと人形ひとがたの集団だった。

彼は冷静に一体、又一体と人形ひとがたを破壊していく。
人形ひとがたによっては自己再生能力を備えた型もあり
今回の戦いでその型が導入されている可能性も否定出来ないと
シーニーは彼に徹底した破壊を厳命した。

= シーニーの言う通りだ。
 やっぱり自己再生型が混ざってる。
 動きが独特だから、判る =

数として50~70体は揃えて来ただろうか。
それでもゲールのパワーに勝る機体は無く
派手な爆発音と共に砕けていくだけだ。

「ゲールっ!」

衝撃音を聞き、戦いが始まった事を察知して
阿佐は当初の計画通り
妙子と和司を連れて彼の許に馳せ参じた。
この時点で、人形ひとがたは残り5体となっていた。

「ゲールさん、後ろっ!」
= ?! =

何者かの気配を察し、妙子が悲鳴を上げる。
ゲールの反応よりも先に
阿佐はその影に向かって数発発砲した。
仕留める事は出来なかったが
僅かながら動きが鈍った。

人形ひとがたを全て仕留めたゲールは迷い無く
その影、隠されていたNUMBERINGに襲い掛かる。
ロッソの狙い通り、
それはランクB'のNUMBERINGだったのだ。

「何処迄も卑怯な…っ」

怒り心頭の阿佐が拳銃を構える。
しかし。

= 僕がる =

脳裏に響いて来たのはゲールの声だった。

「ゲール?」
= 阿佐は妙子さんと和司くんを守って! =
「…解ったよ、ゲール」

昔、聞いた事がある。
テレパシーは互いの親密度に合わせて
より鮮明に聞こえてくる。
ゲールが阿佐を信用し、信頼しているからこそ
ベルデやシーニーを介さずとも
こうして会話が成立したのだ。

「絶対に守ってみせるさ!」

阿佐は神経を研ぎ澄ませ、潜伏する敵の数を割り出していた。
ゲールが対NUMBERING戦に専念出来る様に、と。

* * * * * *

妙子のマンションを中心として
今、ゲールや阿佐達が居る場所の反対側。
ランクBのNUMBERING集団は
其処から姿を現した。
暫く歩いて行くと、
人影が一つ 闇と同化して立っている。

「誰だ、貴様? NUMBERINGだな?」
「……」
「俺達はランクBのNUMBERING。貴様は?」
「……」

影は笑っている様だった。
癪に障る。

「ランクを名乗れっ!!」
Heuschreckeホイシュレッケ型 SSSトリプルエス Kreuzクロイツ
「…何だと?」
「おい? どうした?」
「当の昔に廃棄処分にされた筈の型番だ…。
 それが、どうして此処に…?」
「どうした? 確りしろ!」
「幻の…ランク、SSS……?」
「ほぅ。データ上から抹消されたランクSSSを
 知ってる奴がまだ居たとはな。
 話が早いじゃねぇか」

其処に立っていたのは
解除状態のロッソだった。
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