事件ファイル No.6-12

鷹矢 晋司 暴行殺人事件・後編

もっと【楽】な仕事だと思っていた。
実際、この世の中に居るNUMBERINGは
圧倒的にランクCが多い。
改造を施され、より戦闘向きになった
自分達ランクBクラスが恐らくはこの世で一番強い。
そう考えている仲間達だって少なくはない。

その仲間達が、一瞬で【潰された】。

「不運だったな。
 SSSと鉢合わせになるなんて」
「この世で4体しか居ないSSS…。
 何でこんな所に……?」
「何でだろうな?」
「ふ…巫山戯るなっ!!」
「巫山戯てるのはお前の御主人様だよ」

ロッソの声は冷静で落ち着いている。
それが逆に、聞く側からすれば恐ろしかった。

耳にはしていた。
ランクSSSが収容されていた研究所の事。
其処でなされていた研究内容も、僅かながら。

4年前。
謎の爆破事故が起き、研究所が閉鎖された事。
それ以降。
ランクSSSである4体のNUMBERINGの事は
風の噂ですら聞かなくなった。
爆破に巻き込まれて
廃棄処分となったとばかり思っていた。

だが、実際は…。

「まさか…お前達が、あの研究所を……?」

震えて口にしたNUMBERINGに対し
ロッソは解除状態から元の姿に戻ると
冷ややかな笑みを浮かべて彼を見つめた。

「NUMBERINGが…そんな……」
「研究員は俺達の親でも何でも無ぇ。
 面白半分で人の体を弄って
 兵器ゴッコなんてさせるからこうなるんだ」
「彼等研究者は俺達の恩人だぞっ?!」
「御都合主義に洗脳されてやがる。
 奴等は俺達の恩人なんかじゃねぇ。
 奴等は…一人の少女の血肉を利用して
 神になったつもりでいる、とんだ道化師共だ」

志穂が無残な殺され方をし、
その遺体が告別式の前に行方不明となった事を知ってから
鷹矢はずっと【彼女】を捜し続けていた。
亡くなったのであれば、せめて家族の許へ帰してやりたい。
もし生きているのであれば、側に居て彼女を助けたい。
そして何よりも…
彼女達がどうして『殺されなければならなかった』のか。
その真相が知りたかった。

事件の真相は…皮肉な事に
鷹矢自身が殺され、NUMBERINGとして蘇ってから
同じ立場にある仲間達の協力で知る事が出来た。
だからこそ許せなかった。
全てが。

「思い上がった奴等の所為で
 死ななくてもいい人間が死に、
 死んでりゃいい犯罪者が生き返る事となった。
 俺達【Memento Mori】は、道を正す」
「貴様等こそ思い上がってる!
 自分達を神だとでも言いたいのかっ?!」
「俺達は【神様】じゃねぇよ」

そう言ってロッソは笑っている。
不気味なまでに明るい笑顔。

「【殺し屋】だ。
 NUMBERINGにとっての、な」
「な…っ?」
「怨むなら、ランクSSSなんかを生み出した
 研究者達を怨むんだな」

そう言って、敵NUMBERINGの顔面に右拳を貫通させた。
生温い感触が腕に残る筈だが
義手であるロッソにはその感覚が判らない。
10体居た筈のランクB、NUMBERING達は
あっという間にロッソの餌食となって消えた。
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