事件ファイル No.6-14

鷹矢 晋司 暴行殺人事件・後編

「隠し立てすると碌な事にならんよ?」
「ほ…本当に知らねぇ!
 祖父じいちゃんは自分の事何も話したがらねぇ!
 親父も同じだ!
 組織? んな事、誰も知らねぇよっ!!」
「それが本当かどうか探らせてもらうわ」

シーニーはそのままの格好でベルデに頷く。
彼女も頷くと、温かい血が流れ落ちる
切断された左足首に手を触れた。

「…嘘吐き」
「へっ?」
「【血】が全てを教えてくれた。
 自分の私利私欲の為に
 死亡したとされ 戸籍を失った人達の
 『再利用』を思い付いた奴が居る。
 そのアイディアが面白いからと
 金銭援助して富を築いたのが…」
此奴コイツのお祖父じいちゃん、っつー訳やな。
 流石やなぁ~。
 いやぁ~とんでもない大悪党やわ。
 息子や孫息子の悪事なんて霞む霞む」

シーニーは再度、純一と目を合わせた。
怒りと殺意に溢れた瞳。

「情報収集は出来た。
 お前はなかなか良ぇやっちゃな。
 言うたらアカン情報を
 ベラベラと喋ってくれて、おおきに」
「お、俺は……」
「口でも血でも、話してしもうたら同じや。
 それがお前の祖父じいさんの企んだ
 計画の結果やさかい」

シーニーはそう言い捨てると
純一の体を思い切り壁に投げ当てた。
衝撃で壁に大きな凹みが出来る。
恐らく、純一の体にも
骨折等のダメージが入っただろう。

「と、言う事で…」

シーニーとベルデは同時に
ベランダの方へと目を向けた。
タワービルの最上階。
そのベランダにずっと潜んでいた影。

「俺等の用事は終わった。
 さて、そっちはどう出るんや?」
「……」
「こ…殺せ…! 命令、だぞ…っ!
 此奴コイツ等を、…殺せっ!!」

息も絶え絶えに純一が命じるものの
姿を見せたランクB'のNUMBERINGは無言のまま、
純一とシーニー達を交互に見ている。

「貴方」

ベルデがNUMBERINGに声を掛ける。

「鷹矢 晋司さんの両手と両足を奪ったのは…
 貴方なのね」
「……」
其奴ソイツの【血】が全てを教えてくれた。
 今みたいに、其奴が命令して
 貴方は命令に従って
 身動き出来ない鷹矢さんの両手両足を粉砕した」
「…それが解るのか?」
「えぇ。私にはそう云う力が備わっているの」

NUMBERINGは静かにベルデを見つめていた。
反論する事も無く
だからといって純一の命令に従う素振りさえ見せない。

「私は……」

そう呟くとNUMBERINGはベルデに背を向けた。
そして。

「ぐげぇっ!」

NUMBERINGの拳は主である筈の
純一の心臓を握り潰していた。
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