事件ファイル No.6-15

鷹矢 晋司 暴行殺人事件・後編

驚き等は無かった。
恐らく彼は本来の主である祖父から
孫息子の処分を命じられていたのだろう。
それ位に、彼には迷いが無かった。

「さて、じゃあ此処からが第二ラウンド?」
「鷹矢 晋司は…此処には来ないのか?」
「何や? 鷹矢を御指名かいな」
「彼はNUMBERINGとして蘇ったのだろう?」
「あぁ。それが何か?」
「G-Cell適合者」
「……」

シーニーの視線が一気に険しくなった。
それ以上は口にするなと言いたげに。

「決着を付けたい」
「鷹矢とか」
「あぁ」
「解った。じゃあ舞台を変えよ。
 鷹矢が居る所迄 案内するわ」
「…感謝する」

ベルデは何も言わずNUMBERINGを見ている。
彼女には彼の心の声が聴こえていた。

* * * * * *

姿を現した三人の姿、
特に敵側のランクB'の顔を見ると
ロッソの表情が徐々に険しくなっていった。

「お前と闘いたいんやと。
 だから連れて来た」
「…成程な」
「因みに、純一は此奴コイツが始末した」
「へぇ~。仲間割れか?」
「あの男は仲間ではない」

NUMBERINGはふとそんな事を口にした。

「主でもない」
「そんな奴の命令に従って
 したくも無い仕事をしてたってか。
 …御苦労さん、だな」
「鷹矢」
「今は【Rossoロッソ】だ」
「ならばロッソ。お前に決闘を申し込む」
「……」
「俺はランクB'。Gliedグリート

NUMBERINGは自身を【Gliedグリート】と名乗った。

「ドイツ語かな?
 パーツとか一員、手足って意味が有る。
 或る意味、ロッソにはこれ以上無い『皮肉』やな」

シーニーがベルデにそう耳打ちした。
彼女は静かに頷くとシーニーにそっと告げた。

「グリートはもう耐久年数が過ぎてるわ。
 廃棄される事が決まってるみたいなの」
「成程なぁ…。
 だから敢えて、鷹矢…ロッソと闘いたいってか」
「そうかも知れない」

ベルデは二人の戦いを見守っていた。
否、グリートの戦士としての最期を。

Heuschreckeホイシュレッケ型 SSSトリプルエス Kreuzクロイツ。 Rossoロッソ
「……」

グリートは笑みを浮かべ、構えた。
ロッソも無表情のまま構える。
暫しそのまま互いの出方を伺う様子だったが
頭上の三日月に雲がかかった瞬間、双方が動いた。
ランクB'であるグリートが圧している様に見えるが
ロッソに効果的なダメージは一切与えられていない。
圧倒的なランクの差が其処に存在していた。
動きに格段の差が生じている。

一頻りグリートに攻撃をさせてから
ロッソはステップで後方へ下がる。
彼の右足のジョイント部分から
白い蒸気が噴き出していた。
左足を軸にしての強烈な回転蹴りが
グリートの腹部に入ると
そのまま彼の上半身と下半身を切断した。
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