事件ファイル No.6-16

鷹矢 晋司 暴行殺人事件・後編

ゲールが合流した時、全ての決着がついていた。
ロッソは静かにグリートを見下ろしている。

「彼は、ずっと後悔していたみたい」

ベルデがそう言い出した。

「グリートの、彼の心の声を聞いたの。
 貴方がNUMBERINGとして復活したと云う
 噂を聞きつけてから
 ずっと彼は貴方との一対一の決闘を夢見ていた。
 きっと、貴方に裁かれたかったのね」
「…莫迦げた夢だな」
「そうかも、知れない」

ロッソの声は震えていた。
ベルデはそんな彼を察し、そっと優しく抱き締めた。

「弔ってあげましょう」
「…あぁ」
「えぇんか、ロッソ?
 どんな事情があれ、お前を襲撃した事実は消えん」
此奴コイツも所詮は【道具】だったんだよ。
 感情を持つ道具。だからこそ、苦しんで来た。
 俺に殺される事を夢見る位に、な」
「ロッソ……」
「弔ってやろうぜ。
 俺達は同じ【戦士】だ」
「……そうやな」
= そうだね。僕もその方が良いと思う =

月明かりが優しくグリートの遺体を照らす。
NUMBERINGの重責から解放された彼の表情は
とても穏やかで満たされている様だった。

* * * * * *

「あんなけ大暴れしたってのに」

翌日の報道番組を見ながら
シーニーは盛大にぼやいていた。

「どの局も『一切報道無し』とは
 どう云う見解やねんっ?!」
「寧ろあんなヤバい物、報道出来るか」
「そやかてなぁ~、ロッソ」
「報道規制が入ったって聞いたよ」
「誰から?」
「水間さん」
「水間ちゃんが規制掛けたん?」
「いや。もっと上の方だと」
「渡邊の御隠居かね?」
「その線が濃厚かも」
「自分の孫息子切り捨てて、報道規制ねぇ。
 大した悪党ですわ、ほんまに…」

ブツブツとボヤくシーニーを横目に
ベルデとゲールは妙子・和司親子と
同じテーブルに座ってお茶を飲んでいた。

「実は引っ越しを考えてて」
「今のマンションから?」
「そう。今の会社が人員削減に乗り出して
 事務方がその枠に入ってるのよ。
 今のお給料で何とか暮らして来たけど
 流石に転職を考えていると
 あのマンションに住み続けるのは大変で…」
「そっか…。和司君の保育園の件も有るもんね」
「そうなのよ」
「…部屋余ってるし。此処に住めば?」
「「えっ?」」

何気無いロッソの一言に
その場に居た全員が声を上げた。

「妙子、お前調理出来るよな。
 もう一人位調理担当が欲しいと思ってたんだ」
「出来る…けど。良いの?」
「此処なら誰かが和司の面倒もみられる。
 余力があれば保育園も行けるんだろうし」
「晋……」
「後はオーナーが『うん』と言ってくれれば」

ロッソはそう言って意地悪そうにシーニーを見た。
その場に居た全員が一斉に縋る目でシーニーを見つめる。

「…部屋は余ってるし、従業員足りんし。
 良ぇんちゃう?」
「シーニー!」
「本当に良いのか、シーニー?」
「俺は構へんよ。
 ロッソが妙子さんに手ぇ出さんかったら」

その直後。
シーニーの首にロッソの強烈なラリアットが炸裂した。
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